軽い気持ちがエスカレートしてしまった
刑務官から一変、囚われの身となった被告。初公判で行なわれた被告人質問では、どことなく不安そうな声で質問に答えていた。
弁護人「まず、Aとはどんな話で盛り上がったのか」
被告「車好きという趣味が一緒で、車の話をして盛り上がりました」
Aからお菓子を求められた際のやり取りについて、被告は次のように詳述した。
「令和5(2003)年の8月から9月くらいだと思います。Aと話している中で、『甘いものが欲しい』と言われ、『さすがにやばいでしょ』と言いましたが、途中から『お金あげますよ』と言われて、本当にお金が貰えるならと、少しくらいならいいやと思いました」
受刑者にとって、「甘いもの」はとても貴重だという。
刑務所では、原則的に給食されたもの以外は口にすることができない。ただし、受刑者の日常の態度などの評価によっては優遇措置として、月に1~2回だけ限られた金額の中で「甘いもの」を購入して食べることができる。
また、Bについて被告は「Bは平成31(2019)年に刑務所に入所して、(被告が担当していた)工場に入ってきて、結構話すようになりました。雑談しているときに、『甘いものが食べたいんですよね』と言ってたので、渡してしまいました」と供述している。
続けて、被告はBに恩があるとも語った。
「Bは、工場ではリーダー的な存在で、(被告が)号令を忘れたときがあって、そのときにBが号令を教えてくれて、それが(上司に)バレてなくて、お菓子くらいならいいかなと思いました」
被告はBから金銭を得た経緯について、Bからも「『お金あげますよ』と言われて、『わかった。ありがとう』と了承してしまいました」と話す。結局、被告がAとBから得た金銭は、生活費や彼女との交際費に使っていたという。
弁護人から「今回の事件の原因はどこにあったか」と問われると、被告は「工場だったり、居室だったりで話しているうちに、友達のような関係になってしまったことが原因だと思います。軽い気持ちでお菓子をあげたことが、そこからエスカレートしてしまいました」と答えた。