Bの件が発覚しても被告は犯行を続けた 

公判では被告人質問が佳境に入るにつれて、被告の罪の意識のなさが露呈する場面もあった。

2024年4月、Bから金銭を得ていた件が刑務所内で発覚してしまった。だが、被告はAに対して、その後も変わらずに便宜を図りつづけたのだ。

「Bの件が発覚してから、やめないとなと思ったのですが、Aの件がバレていないんだなと思い、Aからも『お金あげますんで』と言われていたので、お金が欲しくて(Aには引き続き)やってしまいました」

さらに、被告はお菓子だけしか求めなかったBに対して、「菓子だけだと割に合わないよなと思い、『欲しいものあったら言ってくれ。やれることやるよ』」と自ら発言していたというのだ。

弁護人、検察官からの被告人質問が終わり、裁判長が「刑務官になった志望動機は?」と聞くと、被告はこう答えた。

被告「元々、小さいころから、家族には『公務員になれ』と言われていて、公安職になりたいと思っていました。刑務官に合格したので、刑務官になりました」

さらに、裁判長があきれ顔で「刑務所内では、年に1回、こういうことはしてはいけないよ、という講習会があるよね。日常的にも、受刑者に対してしてはいけないことについて指導があるよね。そういうのに、あまり関心がなかったのか」と質問すると、被告は今にも消え失せそうな声で「そうですね」と答えた。

検察官は懲役1年6か月などを求刑 

公判では検察官は、「刑務官の職務の信頼性を著しく傷つけ、社会に衝撃を与えた」と強調。また、「受刑者にさらなる犯罪を起こさせ、許されざる行為と言わなければならず、まさしく利欲的な犯行で酌量の余地はない」と断じ、懲役1年6か月、罰金50万円、追徴金33万5000円を求刑した。

今年6月からは、刑法の改正により「懲役刑」と「禁錮刑」を一本化し、受刑者の個々に応じて必要な作業や指導を行うことで、更生や社会復帰に重点を置いた、「拘禁刑」という新しい刑罰が施行される。

そんなタイミングでの今回の事件に、更生保護の支援をしている関係者からは、憤りの声があがっている。更生を導くはずの刑務官によって、受刑者が巻き込まれた今回の犯行。

判決は、3月17日に予定されている。

※写真はイメージです(Shutterstock)
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取材・文/学生傍聴人