専門店は“効率化”でコスト高を乗り切る
こうした影響を受け、同店は昨年、何度も製品の値上げを実施した。今後も値上げを視野に入れているのか尋ねたところ、機転の利いた判断により、いまだ持ちこたえている状況だという。
「昨年1年間で、卸業者の方で何度もチョコレートの値上げがあったんですが、いくつかの種類については、それほど価格が上がらないうちに、約1年分をまとめて仕入れておいたんです。そのおかげで、今は何とかしのげています。
でも、そろそろ在庫が尽きるため、高騰したチョコレートを仕入れざるを得なくなります。それに伴って、商品も値上げするかもしれません。
実は、本部では、自社でカカオ豆からチョコレートまで加工するか、あるいは工場を押さえて年間分を製造してもらう形にするかといった話が出ています。やはり、商社を通すとコストが高くなってしまうので」
同店は本部の方針により、大幅な値上げを極力避けている。その代わり、オペレーションの効率化によってコスト高を乗り越えているという。
「扱う商品数は減らしましたね。同じ商品を大量に製造したほうが、生産性が向上するので。具体的には、提供までに時間がかかるホットチョコレートは今季からやめました。
容器代がかさむプリンも、かなり前に販売を終了しました。プリンに関しては、コストを抑えるために安価なプラスチック容器を試しましたが、焼き上がりの仕上がりがあまりよくなくて……。
シュークリームも、以前は上下にカットしてクリームを挟むタイプでしたが、より効率化を図るため、底からクリームを注入する方法に変更しています」
同店は現在、製造機能を備えた新店舗の出店を関東地方で計画している。これが実現すれば、さらなる業務の効率化が進むと期待しているという。
「チョコレートをコーティングする機械があるのですが、中のチョコレートを入れ替える作業が大変で、結構手間がかかります。何リットルもあるうえ、味が混ざらないよう慎重に管理しなければいけなくて。
でも、製造機能を備えた店舗がもう1つできれば、一方ではビターチョコレート、もう一方ではスイートチョコレートというように分けて使用できるため、作業効率の向上が期待できます。
また、現在は焼き菓子にも力を入れていますが、フィナンシェやマドレーヌは、一度に作れる量が型の数に制限されます。その点、ボンボンショコラは1日に約1000粒を製造できるため、より効率的です」
「このままではチョコレートがセレブの食べ物になってしまうのではないか」という懸念について店主に尋ねると、「可能性としてはあり得るかもしれません」と同意していた。
日本では、終戦直後にチョコレートが一部の人の嗜好品として扱われていた時代があった。カカオショックの影響で、再びそのような時代が訪れることになるのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班