西洋と日本の根本的な違い

それに対して、西洋には「エゴ」という言葉がある。「エゴ」とは自我という意味でギリシャ語の「エゴーゲ」からきているそうだ。「エゴーゲ」は「少なくとも私は」という意味で、一単語として使ったようだ。

おそらくソクラテスやプラトンが広場で議論をやりとりしていた時代は、「少なくとも私は」という「エゴーゲ」という言葉が飛び交っていたのではないだろうか。

ソクラテスの像
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相手と議論をして他者との違いを際立たせることによって、自分の存在意義を確認していく発想の西洋と、私はもう何もありませんから、あなたと同じですと共同体の和を保っていこうとする文化や言語体系の日本とでは根本的に違っている。

日本では「今日の月はきれいだね」という言い方で、私ではなく「月」を主役にするが、西洋では「私は今日の月をきれいな月として見た」というように「私」からスタートする。

それくらい文化や言語体系が異なっているのだから、二元論的にものを発想したり、主語を明確にして、自分と他者の違いを際立たせたりする論理的な考え方を日本人がするのは、もともとハンデがあるといえるのかもしれない。

だからこそ、日本人にとって、そのような思考は意識しないと身につかないと思うのだ。

文/伊藤真

1958年、東京生まれ。伊藤塾塾長。81年、東京大学在学中に司法試験合格。その後、受験指導を始めたところ、たちまち人気講師となり、95年、「伊藤真の司法試験塾(現、伊藤塾)」を開設する。「伊藤メソッド」と呼ばれる革新的な勉強法を導入し、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラスの実績を不動のものとする。「合格後を考える」という独自の指導理念が評判を呼び、「カリスマ塾長」としてその名を知られている。現在、弁護士として、「1人1票」の実現のために奮闘中。

考える練習
伊藤真
考える練習
2025/1/30
1,540円(税込)
176ページ
ISBN: 978-4763142030

選ぶ、決める、進む、やめる。
そんなとき、どう考えればいいかというと――。


【こんな人にオススメ】
・「自分の頭で考えろ」と言われても、よくわからない
・「頭のいい人」がふだんやっているアプローチが知りたい
・なにかを「選択」するとき、自信を持って答えを出したい
・「考える力」を手に入れて、人生の不安を解消したい

私たちは学校で、知識をつめこむことや
正解を探し出すテクニックは、長年教えられてきた。
いまは、知識をたくさん持っていることより、
それを使って「どう考えるのか」が重要になっている。
「考えろ」と言われて、ただじっとして
ひらめいてくるのを待っていても、考えは浮かんでこない。
「考える練習」として、こんなやり方や観点がある
という事例を、いくつか知っておくことで、
自信を持って答えを出し、
前向きに進むことができるようになるのだ。

仕事でも人生でも、私たちはさまざまな「選択」をしている。
どんな商品が売れるのか。どんな企画が当たるのか。
仕事でだれと組むべきか。どの事業に参画すべきか。
司法試験を目指すべきかやめるべきか。
どの会社や大学に入るのか。
どこに住むのか。だれと結婚するのか……。
「唯一の正解」というものはない。
でも、自分で考えて、選択をしなければならない。
そんな「未知の問題」に対して、「答えをつくり出す」。
これこそが、「考えること」である。
「考える力」を育てることは、
自分の選択や人生に納得し、迷いを消し去ることにつながる。

司法試験をはじめとする法律資格指導校「伊藤塾」を主宰し、
40年以上にわたって、法律家や公務員を目指す人たちや
法律の世界で活躍する人たちと関わってきた著者による、
「考える練習法」の集大成。

さあ、「考える練習」を始めよう。

【目次より】
第1章 「考える練習」の最初の一歩
第2章 「日常生活」の中で鍛える練習
第3章 「論理的」に考える練習
第4章 「論理的」に伝える練習
第5章 考える「精度」をあげる練習
第6章 考え続ける、考えるのをやめる
第7章 「想像力」を広げる練習

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