これが、ヒトの女性器なんだぁって
そこで私は、彼女がシホさんと付き合うことになるきっかけを尋ねた。
「まず大学に入って気が合う友だちって感じで、ほんとにずっと一緒にいて……」
「専攻とかは一緒なの?」
「そう。もう全部一緒です。それで3年生のときに私が合コンに何度か行ってて、相手の男の人と珍しくラインが続いたんですけど、そのとき私のなかで、でもなあ、この人と付き合うのかぁ~、でもなあ~、みたいに考えて、この人との未来が見えないって感じだったんですよ。ていうか、未来が楽しいものだと思えなくて、じゃあ私、誰が好きなんだろうって考えたときに、シホさんが頭に浮かんで、うーん、みたいな……」
「どっちが告ったの?」
「それから1週間くらいして、私から。あの、うちに泊まりに来たんですけど、そのときにちょっと『好きかもしんない』みたいに言って。そうしたら向こうも、『いや、(私も)好きだったっす』って」
「相思相愛だったわけだ」
「でも向こうは、『カオルさんが合コン、合コンとか、彼氏作んなきゃとか言ってたから、なんか(好きとは)言っちゃダメだなって思ってた』って」
当時はカオルなりに、周囲に同調しなければと、仮の姿を演じていたのだろう。そのときのシホさんとのやり取りが頭に浮かんだのか、カオルはフフフと思い出し笑いをする。私は単純な好奇心で質問した。
「初めてシホさんとセックスしたときって、どうだったの?」
「ああっ、いやでも、そうですね。クフッ、ふつうに興奮しました」
「女性とは初めてでしょ?」
「初めて」
「なにか男性との違いを感じたりした?」
「それは、やっぱりチンチンがないから。これが、ヒトの女性器なんだぁって。アハハ」
照れ笑いを浮かべる。そのように相手が恥ずかしがっているときは、こちらは却って遠慮のない聞き方をしたほうが、相手も答えやすい。
「そのときって、タチ(攻める側)はどっちだったの?」
「あ、た、し、だったですね」
「それは自然とそうなってたの?」
「そうでしたね。まあ、日によりますね、いまは……」
「いまは?ネコ(受ける側)になることもあるんだ」
「そうですね。私疲れてて攻めらんないよ、今日は、みたいなときに……」
「いまはどれくらいの割合で会ってるの?」
「働いてるんで……。えーっ、どうかなあ、2週間に1回会ったらいいほうかなあ」
ここで私は、最初に気になっていたことを話題にすることにした。「××(SMクラブ)に所属した順番でいえば、シホさんが先だったような記憶があるんだけど、それはどうしてだったの?」
取材対象を探すために、私は同店のホームページをまめにチェックしていた。結果的に、2人が揃って同じ店で働くようになった経緯を知りたかったのだ。