「2度か3度ほど音合わせをしたら、もう本番」
そうして歌う人が決まり、歌い分けが決まったら、そこからアレンジメントの作業に入ります。『FNS歌謡祭』では基本的にハウスバンドが生演奏を行うので、そのための譜面を書く作業です。
ここでもやはり念頭に置くのは、歌い手をどう生かすかです。譜面を書きながら、このサビの前半はオケを落として、ボーカルをクローズアップしようとか、原曲とはまた別の、テレビサイズのアレンジを考えます。
時間に制限があるなかでは、フルコーラスの演奏などできません。本来8小節のイントロを4小節にするのか、それとも2小節にするのか、はたまたイントロを省き、歌始まりにするのか。
でもイントロのこのきっかけがないとAメロに入りにくい。それだと歌いづらいので、歌終わりにしてエンディングをなくそうとか、考えなければならないことはさまざまです。もっとも最近では、原曲の再現性をより重視するような流れになってきました。
本番当日はもちろんリハーサルを行いますが、コラボレーションを行う1組あたりの持ち時間は15分から20分くらいしかありません。リハーサルでミュージシャンとバンドが顔を揃え、2度か3度ほど音合わせをしたら、もう本番です。音合わせの段階で歌い分けを修正したり、オケの調整をしたりもしますが、やはり大事なのはそこまでの作業ということになります。
最初の打ち合わせから本番まで、期間はだいたい1ヵ月ほどでしょうか。テレビの仕事は、ミュージシャン側のスケジュールの制約もあるため、時間との闘いです。とくに本番当日は秒刻みで進行します。
でもコンマ数秒の単位で進行するスケジュールにもかかわらず、せっかちな僕の場合は予定より早く、巻きで進んでしまいます。その点、僕にはテレビの仕事が性に合っていたのかもしれません。
取材・構成/門間雄介 撮影/石垣星児