6年前に「3年以内に死ぬ」と言われるも…

足立正生(以下同) よろしく(モスコミュールを片手に登場)。ここ(ユーロスペースの事務所)はタバコ吸っていいよな? 取材だし。なに、外じゃないとダメ?

――煙草は1日に何本吸われるんですか?

(指をVの字に)

――20本?

2箱。

――身体はどこも悪くないんですか?

医者には6年前に、これ以上吸ったら死ぬって言われてます。病院に行ったら、70歳までのデータしかなくて、僕がもう80歳すぎてるから、「てめえ、そんなデータじゃ信用できない」って言ったら、「タバコをやめない限りは病院に来るな」って言われ返されて、出禁状態なんだよ(笑)。

でもそのときに「3年以内に死ぬ」って言われて、いまでも生きてるから大丈夫なんじゃないかな。

モスコミュールを片手に登場した足立監督
モスコミュールを片手に登場した足立監督
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――ここにきて、すごいスピードで映画を撮ってますよね。『REVOLUTION+1』は安倍晋三首相銃撃事件から3か月後に公開、今回の『逃走』も桐島聡が亡くなって1年も経たずに映画完成と。

僕は爪の先ほどの予算で、山上や桐島がどういう人間であったのかを描きたいだけだからすぐにできたね。

魚の干物で言うとその骨だけを描ければいいから、(予算は)少なくていいんですよ。それよりも、映画でしか表現できない人間性というものを、メディアでぐちゃぐちゃにされる前に早く自分の意見を出したい。

すぐに飲み干して、その後もスタッフにおかわりを頼んでいた
すぐに飲み干して、その後もスタッフにおかわりを頼んでいた

――鮮度があるうちに制作から公開までする、ということですか。

この現代社会の中で向き合う必要のある題材・人物をできるだけ早く、映画という表現で出すこと、それをテーマにしてるからね。

『REVOLUTION+1』は脚本を10校ぐらい書いたけど、それでも早くやれた。『逃走』も、本当はもっと早くできたんだけど、いろいろタイミングがあってね、遅くなった。

ホントは新聞記事みたいに映画を出したいんですよ。別に奇をてらってるわけではなく、必死に時代と向き合っているだけなんです。

映画を作れば作るほど懐は貧しくなるけど、社会的な大事件が起きれば、なにか考えるわけじゃないですか? それは社会の問題だけじゃなく、人間の問題であり自分の問題なので。

昔は若松とか大島渚と連日のように飲み屋でワーワーガタガタやっていて、そういう中で彼らは彼らなりの、私は私なりに作品で提案していたわけです。

それは問題提起だけじゃなく、映画っていう表現でもっと主張をしたいんです。その行為で時代と向き合うということだけは今もやめられないね。