サービス事業への進出とは?
キングジムは「第10次中期経営計画」において、事業領域の拡大に100億円、新製品開発・生産設備投資に20億円投じる計画を立てていた。
2021年11月に家電や雑貨の企画販売を行なうライフオンプロダクツ、そして2022年9月にキッチン用品などを扱うエイチアイエムを取得している。
2社を合わせた直近通期の売上は50億円を超える規模であり、中期経営計画達成に向けて着実に歩みを進めていたのだ。
宮本氏は激変する商環境の中で、業績拡大に向けた青写真を描き、それを実現するためにあらゆる手を尽くしていたように見える。
ただし、キングジムはコロナ禍で販売を強化した衛生用品需要の反動減に見舞われて売上高は伸び悩み、コロナ関連用品の滞留在庫の評価損を計上して営業赤字となった。
そして買収で生じたのれんの減損損失を出したことにより、最終赤字に陥り、実績を伴うことができなかったのである。

https://www.kingjim.co.jp/ir/library/index.html
キングジムの海外売上比率は4%程度。40%の“プラス”や60%を超える“ぺんてる”などと比べると国内依存がきわめて強い。
矢野経済研究所の調査によれば、国内の文具・事務用品市場規模は2021年度に4000億円を切った(「文具・事務用品市場に関する調査を実施(2023年)」)。
キングジムはデジタル化の進行で縮小が明らかな国内市場に固執するべきではないだろう。
確かに、変革というテーマは木村氏による「第11次中期経営計画」でも踏襲されており、この計画は「骨太の方針」「資源」「既存ビジネス強化」と3つの柱で構成されている。
キングジムは2027年6月期の売上高を520億円に設定している。そのうちの50億円はサービス事業、EC事業、海外事業で創出するという内容だが、「骨太の方針」のトップに掲げているサービス事業の具体的な計画が見えてこない。
「テプラのキングジム」から「ビジュアルコミュニケーションのキングジム」へと、「表示」ニーズをビジネスに結び付ける事業の立ち上げだという。
新規サービス事業の開始と推進に10億円もの投資枠を設定している。
それだけの投資をして、顧客にどのような利益をもたらすのか。それを早く明らかにする必要があるはずだ。