「あんたは、正しいだけで心がない」
世代や価値観の違う人と本音で語り合えば、誰かを傷つけてしまうこともある。「差別的だ」「不適切だ」と批判を受けることもある。
ましてや発言の一部が切り取られ、ネット上で拡散されるこの時代に、そのリスクは脅威だ。だから何も言えなくなるか、あたりさわりのないことしか言えなくなる。
心の中で思っていても言えないモヤモヤが一人ひとりの間に蔓延し、それが社会全体の閉塞感となる。
コロナ禍でも、集団感染に対するバッシングを恐れ、社会全体が自粛ムードになった。さまざまな行事が中止され、外に出ること、人が集まることに対する世間の目は厳しくなり、「少しでもリスクがあるならやらない方がマシ」という、ことなかれ主義が広がった。
ただ、行事や授業は止まっても、時間の流れは止まらない。そうして、多くの子どもや若者が、思い出もないまま学校を卒業し、一度しか来ない思春期を謳おう歌かできぬまま「社会」に押し出されていった。
起こらないかもしれない問題を恐れて何もせず、実体のない「世間」に萎縮して口をつぐむ……。
正論を言っていれば叩かれることはない。そうして人々はマニュアルやガイドラインに身を委ね、思考停止に陥っていく。ドラマの台詞が私の頭の中にこだまする。
「あんたは、正しいだけで心がない」
写真/shutterstock
*1 奈良教育大学付属小学校編『みんなのねがいでつくる学校』クリエイツかもがわ、2021年。
*2 「先生方、子どもたち、保護者へのエール」「奈良教育大附属小を守る会」ホームページ。https://www.kodomonomahoroba.com/forum/xian-sheng-fang-zi-domotati-bao-hu-zhe-nominasamahenoeru
*3 「奈良教育大附属小を守る会」ホームページ。https://www.kodomonomahoroba.com
*4 鈴木大裕「〜マニュアル化する社会の中で:奈良教育大附属小学校『不適切指導』事件〜」「先生が先生になれない世の中で(31)」大月書店note、2024年3月8日。https://note.com/otsukishoten/n/n2b3a4b5c9ec6