「右翼に殺される」

法廷には通訳者も用意されていたが、在留歴11年ということもあり、流ちょうな日本語で彼は質問に答えていく。

弁護人「なぜ、罪をすべて認めたのですか」

姜被告「自分は歴史には興味がないけれども、日本人にとって靖国神社は重要なところなので、これから有罪になると、日本人の右翼に殺される、暗殺されると思い、言いました(罪を認めました)」

逮捕当時は、Bらが「落書きをすることを知らなかった」と否認していたという。

だが事件後、右翼団体の抗議や「高須クリニック」の高須克弥院長が、逃亡しているBらに1000万円もの懸賞金をかけたことから、恐怖を感じていたとのことだ。

一方で、Bらの犯行内容については、直前まで知らなかったと強調する。

「今年の2月の生放送(Bのライブ配信)で(Bが)『大きなことをする』と言っていたが、具体的な内容は知りませんでした」

姜被告は、5月28日の下見をするまで靖国神社にこれまで一度も行ったことがなかったといい、「歴史に興味がなく、靖国神社を恨んでもいませんでした」と弁解した。

「Toilet」と赤字で落書きされた社号標(BのSNSより引用。現在は削除されている)
「Toilet」と赤字で落書きされた社号標(BのSNSより引用。現在は削除されている)

弁護側の被告質問では、11年前に日本へ来た理由について問う場面があった。

姜被告は、日本の国民的キャラクターである「ドラえもん」が大好きだといい、長々と語りはじめる。

「子どもの時に、『ドラえもん』が好きで、大人になったら日本へ行きたいという気持ちになりました。『ドラえもん』の話の中に、海洋保護のセリフがあります。『ドラえもん』のことが本当に好き。でも、日本が好きかどうか曖昧になりました」

さらに、日本の教育と処理水放出の矛盾についても語りはじめた。

「日本人は、他の人の気持ちを大切にしているとの教育を受けました。しかし、周辺諸国の気持ちを気にしないで処理水を放出している。教育とは別ではないでしょうか」

姜被告は間髪を容れずに、勾留中の留置場での警察官の対応について不満を述べるなど、日本での体験談を語りはじめた。

弁護人や裁判官が制止しようとするが、「待って、待って」と話し続ける。

被告質問が中盤に差しかかったころ、姜被告は突如息が上がったのか、苦しそうにしはじめ、裁判官は一時休廷を宣言する事態に。13分間の休廷後、公判は再開され、息苦しそうにする場面もあったが、その後は予定どおりに公判は閉廷を迎えた。

「私が協力しなければ、海は10年後、20年後、どうなるのか」と海洋保護の重要性を力説するいっぽう、検察側から「共犯者が捕まっていないことについてどう思うか」と問われた際には、「答えたくないです」と薄ら笑いを浮かべた姜被告。

次回の公判は、検察側と弁護側の双方が意見を述べる論告・求刑と弁論が予定されている。