ハイスペ男子のデートの実態
「『ハイスペ男子』として見られているので、マッチングアプリで会うときのお店も、転職前よりワンランク高いお店を選ばないといけなくなりました。『年収1000万円のくせに、こんなしょぼいお店に連れていくの?』と思われたくないんです。食べログでは平均単価8000円以上のお店を選ぶようにしています。
デートのときも、もちろん全部払いますよ。『この子に払いたくないな』と思うときもありますが、意地で払っています(笑)」
普段使うお店のランクが上がったのは、デートのときだけではない。職場の先輩とのランチも2000円は当たり前で、飲みに行くお店のランクも上がったのだという。
「趣味は登山なのですが、レストランと同じくワンランク上のものを選ぶようになって、今まで着ていたモンベルがユニクロに見えるようになりました(笑)。先輩に誘われてゴルフも始めたので、カードの請求額も増えたんじゃないかな。あまり気にしていませんが…」
しかし、彼女ができない理由は…
「まず、物理的にデートをする時間がありません」とH.H さんは語る。
「コンサルティングファームは実力主義なので、仕事はよくも悪くもすべて任せてくれますが、悪く言えば『丸投げ』されます。『どうしてそう考えたの?』と5回くらい上司から聞かれることはしょっちゅうで、『考え直せ』と突き返されることも。前職のように、誰かに答えを教えてもらえることはありません。
査定の評価によって年収は20万~100万円変わる上に、給料は年俸制です。残業時間は前職では月?週?15時間くらいだったのが、30時間以上に増えました。平日は遅くまで働いているからデートは無理。残るは休日ですが、仕事を持ち帰ってすることも多いですね」
コンサル業界は“みなし残業制”を採用している会社が多い。H.H さんが勤める会社でもそうだという。年収の中に月45時間分の固定残業代が含まれているので、残業代が払われることはない。
忙しさから物理的に会う時間がないのは仕方がないように思えるが、彼女ができない理由はそれだけではないらしい。転職をしてモテ始めるようになって、恋愛観も変わったそうだ。
「最も彼女ができない理由としては……」と前置きをして、こう続けた。
「女性に求める“年収レベル”も上がってしまったんです。
自分の年収が上がると、次は世帯年収を上げたくなるんですよ。『年収が低い女性と結婚したら、もったいないな』と思うようになりました。女性なら30歳で年収500万円は欲しいですね。
当たり前ですが、そんな女性はなかなかいなくて……ここ2年くらい、彼女ができていません」
お金を稼いでいれば、どんな仕事をしていてもいいのだろうか。
「いいえ。女性に求める“仕事のレベル”も上がりました。僕がこれだけ忙しくなったこともあって、同じように頑張っている女性じゃないと価値観が合わないかも……と感じるようになりました。事務職などでゆるく働いている子より、営業やコンサルなどでバリバリ働いている子の方が、惹かれやすい傾向にあります」
「あと、これはハイスペというより、コンサルならではだと思うのですが…」と前置きをして、H.H さんは続けた。
「就活ランキングで人気はありますが、同じく上位の商社マンのようにわかりやすく『すごい』わけではないので、商社の友人と合コンに行くと、見劣りすると感じることもあります。『コンサルってなに?』という女の子も一定数いますしね。コンサルという言葉だけ知っていて、それに釣られてくる女の子でも、仕事の話にまでは踏み込んで来ません」
仕事の話ができないのは「きちんと仕事をしている、自立した女性が好み」というH.H さんにとって、少し物足りないのだという。「僕の肩書きと年収に興味があるんだな、っていうのが伝わってきます」と苦笑いしていた。
――年収や肩書きを手に入れたとしても、恋愛がうまくいくとは限らない。恋の行方を決めるのは、意外にも職業ではないのかもしれない。
取材・文/綾部まと