日本人相手に“インバウン丼” がウケる3つの理由
「まず1つ目のメリットは特別感の演出ができること。特別な体験を求める日本人顧客にとっては魅力となる可能性があります。誕生日や記念日など、ハレの日に利用する顧客は一定数いると考えられます。
2つ目は品質の高さがアピールできること。“インバウンド丼”と呼ばれることで、高品質な食材を使用していることを明確にアピールできるため、食の質にこだわる日本人顧客の心を捉えることができるのです。
そして3つ目は新たな食体験の提供。産地直送で鮮度の高い高級食材を味わっていただくことで、新たな食体験を提供することができます」
ただ一方で、もちろんデメリットもあるという。日本人顧客の中には、高価格帯のメニューに対して抵抗感を持つ人が一定数いる。さらに、頻繁に利用できる価格帯ではないため、日常的な利用には不向きである。
そこで、日本人顧客への有効性を高めるために、ターゲットを明確化して、より効果的なプロモーションをすることが大事になってくる。
高価格帯の海鮮丼だけでなく、さまざまな価格帯のメニューを用意して幅広い顧客に対応する、どこで獲れた、どのような食材なのか、食材の背景やストーリーを丁寧に伝えることで、顧客の興味を引きつけ、より深い満足感を与えることができるのだ。
「食に対する価値観は時代とともに変化するため、常に最新のトレンドを意識することが求められます。“インバウン丼”に代表される高価格帯メニューを日本人顧客にも有効活用するためには、顧客のニーズや期待に応える“真の付加価値”を提供する戦略的な取り組みが不可欠です。このような取り組みが飲食業や観光業に従事する方の給与アップにもつながります。
これからの飲食業は、単に食事を提供する場所ではなく、産地の魅力を発信し、観光客に特別な体験を提供する場へと進化していくことが予想されます。多様化する顧客ニーズに対応することで、より多くのお客様に愛される店となるでしょう」
外国人観光客だけでなく、日本人の多くが“インバウン丼”を気軽に楽しめるほどに、経済が上向いていってほしい。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部