「加害者の母親から電話があり…」
「19歳の男は当然、道交法違反(酒気帯び運転)にも問われていますが、男性を死なせた罪を構成する『自動車運転死傷処罰法』では故意性が認められず、7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金が法定刑の『過失』になりました。
仮に『危険運転』が適用され、故意性が極めて強いと判断されれば刑法199条の殺人罪(死刑・無期または5年以上の懲役)で処罰されることもあるだけに、遺族感情を斟酌すれば『無念』との声もあるでしょう。
地検がこの処分に至ったのは、現場の一方通行から二輪車が除外されており、危険運転致死罪は規制対象を限定した道路には適用しないという規定があったからです」(社会部事件担当デスク)
事件か事故かによって量刑は大きく異なるが、被害者の男性や遺族にとってはそんなことは関係ない。亡くなった川口市在住の会社役員の男性(当時51)には、何の落ち度もなかったのだから。
凄惨な事故現場の近くに住む男性の記憶も生々しい。
「折れた街灯のあった場所はコンクリートで塞がれて、道もきれいにはなりましたが、車が衝突して止まったアパートの壁は今でも板をはり付けたままで、あらためて凄まじい事故だったなと思います。ウチの車も衝撃で飛んできた破片で傷つきましたからね……。
亡くなった方の献花台には今もお花や飲み物などが供えられていて、手を合わせる人を見かけます。取り返しのつかないことではありますし、まずは亡くなった方に関する補償などをきちんとしてほしいと思いますね」
男性の傷ついた車は、修理中だという。
「加害者側の保険でまかなってもらえるそうで、修理に出しているところです。事故が起きたのは日曜日で、その次の週に加害者の母親から電話がかかってきて『申し訳ない、申し訳ない』とずっと平謝りでしたよ。
加害者が乗っていたのはレンタカーだったので、飲酒運転では保険が下りないという話で半分あきらめていたんですが、その電話から何週間か後に、今度は保険会社から電話がかかってきました。
加害者の母親が加入する保険の特約が適用できることになり、それでウチの車の補償もしてもらえることになったんです。
それにしてもあの事故を、危険運転致死罪では問えないとニュースで見て愕然としました。あの一方通行を100キロ超えで走ってきた映像も見ていますし、あれが危険運転でないなら法律はおかしいと思う。ご遺族はやり切れないでしょうね」