「無料なのにこんなに美味いのか」というお客さんの喜ぶ顔が見たい

――だからこそ、お客さんにお腹いっぱい食べてもらいたいとライス無料のサービスを?

そうではありません。俺は横浜育ちで俺をさんざん虐待した母親の彼氏が機嫌がいい時に連れてかれた家系御三家の「六角家」が大好きだった。その後に「本牧家」にもハマって。

それら御三家の本店ではライス無料サービスなんてやっておらず、そういったサービスは家系のフランチャイズ店が始めたことでした。

でもお客様からしたら“家系といえばライス無料”という印象は強いだろうし、みんなが喜んでくれるなら出したい、という思いひとつで、ライス無料のサービスを始めたんです。

でも、無料だからと安くてどうでもいいライスを出す気はなく、ライスにもちゃんとこだわりを持ってやっているから、それを当たり前にされるのは……だからこそ残されるのは我慢ならず、いろいろと試行錯誤してきたわけです。

三郷家で提供されるライス
三郷家で提供されるライス

――そんな中、7日と10日に立て続けに米残し客が連発し、怒りが爆発したと。

もちろん米残しの件だけでなく、9月にはラストオーダー後に来た客をお断りしたらドアをバンっと閉められたり、その客に関する投稿をしたらロクでもないDMがたくさん来たりと、しょうもないことが連発してたんですよ。

――ロクでもないDMとはどんなものでしょうか?

「クズ」だの「カス」だの、「潰れちまえ」だの。「ラーメン屋なんてどうせ中卒だろ」とか。まあ俺は確かに中卒だよ。だから何だって言うんだ? そういう奴には「なんか言いたいことがあるなら店に来なよ」と返すんだけど、「おう今から行くよ」って言って、実際に来た奴はひとりもいません。

――今後、ライスはどういう方針で提供していきますか?

 10月12日から【フォロワーサービス】を試験的に始めました。ライスは基本有料としつつ、フォロー画面をスタッフに提示していただくと“ライス1杯”か“海苔3枚”か“きくらげ”をつけるということにしました。

三郷家のラーメンとライス
三郷家のラーメンとライス

――これまでとは違う形でライス無料のサービスを残すと。

うちの米は三郷の農家さんに提供いただく形で三郷産コシヒカリを使用しています。俺は中学を卒業してから和食や洋食、あらゆる飲食店を経験し、特に和食店では米の炊き方をものすごく勉強させてもらった。

米の炊き方にはこだわりがあるし、「無料なのにこんなに美味いのか」っていうお客さんの喜ぶ顔が見たいんです。本当にただそれだけの気持ちでやっています。

                  ※

石川店長は6歳で家系ラーメンデビューし、それ以降、家系ラーメンのとりこになった。そんな店長が生み出した『三郷家』のラーメンのスープと麺は、馴染み深い「六角家」と大好きな「本牧家」を意識しつつ、石川店長が理想とする家系をカタチにしたもの。ライスもツヤツヤで美味かった。

食品ロス削減のためにも、『三郷家』を訪れる人は自分の胃袋とよく相談したうえでライスを注文するのがよさそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班