「主導権は親が握ること」
しかし当然ながら、スマホを取り上げたことで、息子は反発するようになる。
「息子には『あなたが学校に行くまでのルールだから』と、断りを入れて制限をかけました。
それでも息子は大暴れして、家の家具や壁などあらゆるものを破損して、『僕をいじめるお母さんなんて大嫌い』って何回も泣き叫ぶんです。
もちろん息子に可哀想なことをしているという良心の呵責もありました。
そのことを、スダチのスタッフに相談したところ、『子どもが抵抗するのはどの家庭にもあることで、お母さんの努力が足りないんです。再登校のため毅然とした態度でプログラムを遂行しましょう』と激励されました」
実際に、スダチのスタッフと思わしきSNSアカウントには、再登校を実現した家庭の成功体験が綴られている。
そこには「警察へ通報するなど~」「ベランダに足をかけたり暴言を吐いたり〜」といった、不登校児童が強く反発しているにもかかわらず、登校刺激を与え続けた報告が散見される。
また、利用者に提供されたスダチの資料によれば、「主導権は親が握ること」「家庭の中のボスは親・子どもの奴隷にならない」といった文言も確認できた。
こうしたアプローチには、子どもを追い込む側面もあるといえる。SNS上では、娯楽を取り上げられた子どもが反抗する事例だけでなく、反対に子どもが無気力になったり、会話をしなくなったりしたことを嘆く親の声もあった。
ただでさえ学校に居心地の悪さを覚える児童・生徒が、家庭でも窮屈な生活を強いられれば、親への不信感を募らせ、より閉塞感を覚えてしまうはずだ。
スダチのプログラムでは、親子関係を構築する重要性が謳われているものの、これではかえって親子関係も破綻してしまうだろう。
たしかに「学校に行くまで」というルールで再登校を促せば、一時的に学校へ復学する子どもも出てくるはずだ。
ただ、再登校後も、子どもに植え付けられた親への不信感や、家庭への絶望感は残り続ける。
スダチの利用者の中には、再登校に至った子どもが、後に自傷行為に走ったと明かす保護者もいた。