Aさんへの処分は適切だったと言い張る知事 

「ああいった表現」とは、Aさんを「公務員失格」と言ったことを指す。この暴言を弁解するために知事はわざわざ委員会で発言を求め、当時の心境がこうだったと同情を買おうとした。

だが、この弁明は告発文書が示す数々の疑惑が知事の言うとおり「核心的な部分で事実でない」場合には通じるが、実際には疑惑は「おおむね事実として浮かび上がっている」(奥谷委員長)状況だ。公金不正支出などの重大な疑惑も含む告発を一刻も早く握りつぶそうと、Aさんの即時更迭と極悪人扱いが知事主導で行なわれたのではないのか。

3月27日の記者会見の直前、県人事課はAさんの人事に関する質問に備えた想定問答として「今回の人事異動は県民局長にふさわしくない行為があったので県民局長の職を解くものである。詳細については調査が必要ですので申し上げられない」との文言を知事に上げていた。

しかし、斎藤知事はこれを考慮することなく、懲戒処分を予告した。「文書を見た直後の知事は怒りまくって、周囲が止める声に耳を貸さなかった時期があると聞いている」と県関係者は証言しており、知事の言動に合致する。

イベントに出席した斎藤知事
イベントに出席した斎藤知事
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斎藤知事と県が行なったこれらのAさんへの仕打ちを、百条委メンバーの藤田孝夫県議は「人事異動ではなく公開処刑だ」と称した。Aさんは比喩でもなく、命をなくすことになった。

「不快に思わせてしまったとしたら過去は取り戻せないですから、そこは直接お詫びしたりとか、申し訳なかったということは言いたいですし、一方でこれからは、そういったことを踏まえて、もっといい知事としての在り方をやっていきたいなと思っています」

百条委で県職員への対応を諭された斎藤知事はこう答え、“やり直し”を図るつもりだと強調したが、Aさんの処分は「適切だった」と言い続けた。

斎藤知事がAさんに詫びなければならないと思う日は来るだろうか。その日が来たとしても、どう償うことができるというのか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班