18~25歳の失業率は65%
UNRWAによると、2014年のイスラエルによる大規模攻撃の後、ガザの失業率は43%に跳ね上がった。なかでも18歳から25歳までの若者層の失業率は65%となっていた。
ガザで話を聞いた若者ムハンマド・ジャード(23)は、同年秋に大学を卒業したものの、仕事がない。「多くの会社を回ったが、特別のコネがなければ就職はできない」と語る。
1歳年上で2年前に大学を卒業した兄も失業中だ。ハマス政府は道路清掃などの失業対策を実施しているが、対象は既婚者に限られ、7時間働いて、1日25シェケル(約800円)。「交通費と昼食で、使い切ってしまう」とジャードは語る。
エジプトとの間の密輸トンネルが封鎖され、空爆でガザの多くの工場が破壊された。それが若者の失業率の異常な高さの原因となっていたのだが、さらにジャードが指摘したのは、パレスチナ自治政府の公務員募集が、2007年以降、停止していることだ。
自治政府への就職は、西岸でもガザでも大きな割合を占める。ガザだけでも8万人の自治政府職員がいるが、8年間もガザで公務員の募集がないのは、ガザを支配するハマスと、西岸を支配する自治政府との分裂に起因している。
2007年時点で職員だった6万6000人には、ハマスがガザを支配した後、自治政府が「ハマスの下では働く必要はない」と指示し、給料だけを支給している。前述のように、ハマスは自前で1万4000人の職員を補充し、その分については独自に給料を払っている。
自治政府はガザで新しい職員の募集はせず、ハマスも公募ではなく、自分の組織から職員を補充している。ガザがハマス支配になって、かつての職員6万6000人は働かないまま自治政府から給料が支払われ、新たに採用された職員1万4000人はハマス関係者で占められている。
パレスチナの政治的な対立が、若者たちの就職を狭める結果になっているのだ。
私が取材したもう1人の若者ムハンマド・ガザール(20)は専門学校を卒業した後、2年間、ほぼ失業状態だ。2014年に情報技術関係の会社で6か月間、交通費だけ支給されてトレーニングを受けたが採用されなかった。
6か月から時には1年間、無給で働くというのは、失業率が高いガザでは一般的だという。その後2か月間、知り合いの会社で朝8時から夜7時まで働いたが、給料は1か月600シェケル(約2万4000円)だった。この2年間で10社余りの会社を回ったが、結局、就職はできなかったという。