就職活動では、人前で話す機会が多く不安
注カフェでは、実際どんな人が働いているのだろうか。都内の大学に通う大学1年生の沙南さん(18歳)は、中学生のときにニュースで注カフェの存在を知り、高校1年生から参加している。彼女の吃音は、3歳のときから始まっていたという。小学校に入学して辛かったのは、国語の音読の時間だ。
「出だしの音がつっかえているのを見て、クラスがシーンとしてしまいました。先生は私が読む場所を認識していないと思って『ここを読むんだよ』と教えてくれるのですが、読む場所がわからないわけではないんです。そのうち、クラスメイトから『早くしてよ』なんて声も聞こえてきて、とても悲しかった記憶があります」
それでも小学校低学年のうちはお遊戯会など人前での発表にも積極的に挑戦した沙南さんだが、高学年になると変化が出てくる。
「私の場合、まったく声が出ないというわけではなくて、特定の発音が苦手なんです。それで、セリフにそうした発音を含むものがあるとつっかえてしまうんです。学芸会の練習のときもそんな調子なので、クラスメイトから『真面目にやってよ』などと言われて、高学年になってからは、頼まれてもセリフの多い役柄は断っていました」
こうした悩みを理解してくれる大人は少なかったと振り返る。
「学年が上がって小学校の先生に相談したこともありましたが、心配してくれるものの、『緊張しなくていいんだよ』という程度のことしか言ってくれませんでした」
一方で、長く吃音と向き合ったことで、対処法も心得た。
「苦手な発音を回避して似た言葉を選択することで、違和感なく会話ができるようにはなりました。それでも、セリフなど置き換えが不可能なものは未だに苦手です」
そんな沙南さんが現在懸念するのは、将来に控えた就職活動だ。
「私は教員を志望しているのですが、教員採用試験や教育実習など、人前で話さなければならない場面が多くあることが予想されます。自分の名前の発音を苦手としているため、今から非常に不安でいっぱいです」
沙南さんが目指すのは小学校教諭。その理由をこう明かす。
「私にとって小学生時代は、吃音によって苦しめられた記憶が濃い時期でもあります。話したいことがあるのに言えず、人間関係に悩んだことを思い出します。一般的にはあまり理解されない苦しみがあることを知り、そうした苦しみがわかる教育者になりたいと思ったのは、そのときです」