画面は見えないが、愛は見える
RTA(リアル・タイム・アタック)という遊び方がある。やり直しや一時停止も含めて、スタートからクリアまでの実時間を計測する。ただ、早くクリアする。それだけのために、RTAの達人たちは数千時間に及ぶ練習、数百台以上のゲーム機本体の厳選、果ては己の肉体に至るまで、持てるものすべてを本番一発勝負にぶつける。
そこにゲーム愛があるのは言わずもがなだが、RTA自体が好きで、高みに上り詰めたプレイヤーもいる。その一人がKazupoon氏だ。
――Kazupoonさんは画面を見ないでRTAを走るそうですね
Kazupoonさん(以下同) 僕のやっているRTAはPlayStation版『ときめきメモリアル 〜forever with you〜』の最難関攻略ヒロイン、藤崎詩織を目隠しで攻略するというものです。
ときメモは恋愛シミュレーションゲームで、3年間の高校生活を送りながら、自分のパラメーターやヒロインの好感度を上げたりし、卒業式の日に彼女から告白を受けるとゲームクリアとなります。
藤崎詩織はときメモ界隈でもラスボスと呼ばれるほど付き合うのが難しいヒロインなのですが、画面を一切見ず、音と記憶だけを頼りに最速でカップル成立を目指すのが本RTAの主旨です。
――最速クリアを目指すだけでも難しそうですが、さらに目隠しとなると、なにが大変ですか?
まず、画面が見えません。
――そうですよね
ですから、コマンドの配置からイベントの発生条件、タイミング、BGMや効果音の細かな違いまで全部覚える必要があります。とくに、BGMと効果音の組み合わせは、今、自分がいったい全体なにをやっているのかを判断する重要な手がかりになるので、しっかり暗記しました。
――組み合わせパターンはどれくらいあるのでしょうか?
ちゃんと数えたことはないですが、体感1000パターンくらいですかね。