炎症性物質が脳のあちこちにダメージを与えている可能性
ブレインフォグの原因は完全には解明されておらず、ウイルス感染により炎症性物質が脳に広がり、二次的に脳内で炎症を引き起こすことで、脳がダメージを受けるのではないかと考えられている。
ダメージを受ける部位は人によって異なり、匂いや味を感じる部分なら味覚障害、認知機能を司る部分ならブレインフォグ、体を動かす部分なら一過性の運動麻痺など、強くダメージを受けた部位により障害の出方が変わってくるのではないかと推測されている。
ブレインフォグの患者の治療をしている、精神科医で医療法人社団こころみ理事長の大澤亮太医師に、どんな患者が受診するのか話をきいた。
「患者さんの多くは、内科や耳鼻科など他の診療科を経由して心療内科・精神科にたどり着くといった経緯で、特に仕事に支障をきたしているケースが目立ちます。
例えば40代の管理職で、高いパフォーマンスを求められる立場の方が、仕事で重要な会議に出席しても内容を覚えていない、集中できる時間が1/6くらいまで減った、長文を読んだり書いたりするのが難しいといった、これまでのような思考や判断ができないことに苦しみ、来院された例もありました」
それではどう診断するのだろうか。大澤医師が続ける。
「ブレインフォグは医学的な病名ではなく、ぼーっとする、物忘れが激しい、といった症状の総称です。そのため診断名として呼ばれることはなく、あくまでも状態を表しています。ブレインフォグかどうかは、患者さんの病歴や経過、これまでの治療法でよくなったかどうか、などから総合的に見極めていくことが必要です。
また、うつ病などと症状が似ているため、区別がつきにくい、あるいは併発していることも多く、症状の評価や判断には時間がかかることがあります。
これまでにうつ病などで治療した経験がなく、新型コロナウイルス感染後から明らかに以前の生活との差を感じる、今までできていたことができない、という違和感を覚える場合はコロナ後遺症のブレインフォグである可能性があります」
患者は20〜50代の比較的若い方が多いが、高齢の方でも気づかないうちに起こっている可能性があるという。