思いやりの延長にあるのがセックス
―― 一方で、子どもがいても、夫婦関係を優先しているカップルはうまくいっている気がします。
そういう夫婦だと、子どもとしても気持ちが楽ですよね。子どもに手がかかると、そちらに神経が行っちゃうから、夫にまで気持ちが行かないっていうのが実際のところだと思います。
――この作品でも、子どもが赤ちゃんのときに妻が苦しんだエピソードがありますけど、子育ての負担が一方に偏ることも原因のひとつだと思います。
ワンオペ育児だとレスになりやすいという話も聞きますね。ずるいとか、相手のほうがいい思いをするのが許せないとか、作品ではそういう人も描きました。結局、思いやりの延長に、相手を愛おしく思う気持ちが生まれて、性生活につながっていくのかなと思うんです。でも家族が日常になってしまうと、日々の生活の中で、お互いへの思いやりを感じる機会も失われてしまうんですよね。
――レタスクラブでの連載中や、書籍を出してからの読者の反響で、意外なものはありましたか?
レタスクラブは料理や生活情報の雑誌だし、こういうテーマを取り上げることへのクレームもあるかなと思ったんですけど、それはなくて。アンケートの反響もわりとよかったらしいです。連載を始めた頃はセックスについてみんなで話していいような空気ではなかったので、静かに読んでいただいている実感はありましたね。
単行本になってからは、何度も読んだとか、自分の悩みはここにあったんだっていう共感の声をいただきました。男性からは厳しい意見もあったんですけど、あるサイトのレビューで、「今、結婚を考えていて、自分は恋人関係がそのまま夫婦関係に移行していくと思ってたけど、そうではなくて、関係性が変わることを念頭に置いておくべきだと思った」という方がいらっしゃって。いい意見だなと思いましたね。