支援制度の乏しさが課題

2018年の同センターが行った調査では、産後の母親の自殺が妊産婦死亡の3分の1を占め、死因の中で最多であることが示された。

「産後うつは母親がなるもの」という認識が社会に深く根付き、母子を対象にした支援制度が広がる中で、父親にも産後うつがあることは日本ではあまり認知されてこなかった。父親への育児参加が推進される一方、課題となるのは母子と比較した際の支援の乏しさだ。

同センターの竹原健二部長はこう話す。

国立成育医療研究センター・竹原健二部長(本人提供)
国立成育医療研究センター・竹原健二部長(本人提供)
すべての画像を見る

「妊産婦の女性の方は妊娠してから産後1年までに医療機関や行政がおこなう健診や様々な保健サービスなどにより、保健医療従事者に生活の状況や健康状態をアセスメント(客観的に分析)してもらう機会が多々あります。しかし、父親にはその機会が1回もないことも珍しくありません。男性も当たり前に家事・育児をするような社会に変わっていく中で、男女問わず、子育てをする人はみんな当たり前に支援される社会になってほしいです」

女性の社会進出が進み、男性の家事・育児への参加が推進される中、妊娠から出産、育児までの一連の中で、周囲の相談先や専門職の支援がないという意味では、父親の産後うつのリスクが今後高まっていくことが懸念される。では、どんな支援や対策が求められるのだろうか。

後編へつづく》

 取材・文/集英社オンライン編集部