演奏中も曲の合間も歓声が鳴り止まなかった35分間
1、2階席をファンが埋め尽くし、アリーナには警察官が立ち並ぶという異様な空間の中で、1曲目の『ロック・アンド・ロール・ミュージック』が始まる。
厳しい監視によって観客は席に座ることを強要され、立ち上がった観客はすぐに押さえつけられていく。それでも気を失う人が出るほどの熱狂が続き、演奏中でも曲の合間でも歓声が止むことはない。
そして11曲目の『アイム・ダウン』が終わると、35分という短いコンサートはあっという間に幕を閉じた。アンコールもなく、ビートルズは楽屋口に用意された車で武道館を後にした。
終演後、観客席に残った女の子たちはみんな泣いていた。少年たちはみんな茫然としていた。
ビートルズの武道館公演はこの日から計5回行われたが、7月1日の昼公演の様子が、その夜の9時から『ザ・ビートルズ日本公演』という1時間の特別番組で、日本テレビのネット中継で放映された。視聴率は59.8%を記録。
番組の前半では、来日時のドキュメント映像が流された。
空港に到着したビートルズが乗り込んだキャデラックが、朝焼けの東京の首都高速をひた走る。そこに突然、ジョン・レノンの歌声で『ミスター・ムーンライト』が流れる。