弱さを語ることは「男らしくない」
世の中には、弱さを語ることに対するバッシングもある。『男がつらい!』や『非モテの品格』の著者である、批評家の杉田俊介氏は「男の弱さとは自分自身の弱さを認められない弱さ」と語る。
フェミニストはよく、男性が弱さを認められないことから、DVやいじめといった攻撃性に転嫁するありさまを「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」と呼ぶ。
「男性は強くあるべきだ」「男性は泣いてはいけない」など、「男性はこうあるべき」という古い価値観が、男性自身を苦しめるというのだ。男らしさ、女らしさを求める旧来の社会における反省から、「男らしさから降りよう」という提言がなされることは多くあった。
だが、仮にこういった「男らしさ」の有害な側面を認めたところで、現状の日本男性にとって男らしさから降りるメリットはない。実際に降りてしまった後、どうしたらいいのか。結局は生きていく道がなく、逃げ場はない。同性である男性同士でその悩みを分かち合うことも難しい。
その点について、実際にいっとき、男らしいとされる行動から距離を置いた松尾昭一さん(仮名)から話を聞いた。
――男らしさから「降りる」ということについて、どう思いますか。
松尾さん(以下同) 昔は惹かれる面もありましたけど、何もいいことはなかったです。まずモテない。たとえば「男だからって、初デートでおごらなくていい」みたいなことを言う女って、クソだと思うんですよ。
だって初デートで割り勘して、次につながるわけないじゃないですか。そういう提言をしている女だって、おごられるほうがいいんでしょ。というか、そういう男と結婚してるでしょっていう。
そもそも、上位のオス以外に存在価値なんてないんですよ。動物ってそうでしょ。メスに選ばれたオスにしか、子孫は残せないんですよ。メスは強いオスとしかつがいになりたくない。
これはもう真実です。マッチングアプリを開いたら、女はそこから上位の男だけを選んでいいねするでしょ。それでアルファ(上位の男)に遊ばれたとしても、俺みたいな下位の男と寝るより、ずっとマシなんですよ。むしろ俺だったら、金をもらってでもやりたくないって言われるだけですよ。
みんなが結婚できる時代って、終わったわけじゃないですか。恋愛結婚って、動物の世界に逆戻りしたのと同じです。つまり、アルファオスが女を独占して、下位のオスは黙って死ぬしかないんです。
女はそれで、「男はみんな浮気してる」とか言うじゃないですか。俺らのことが見えてないんです。俺らは透明な存在なんですよ。アルファ以外の男は、視界に入らないんです。だから選ばれない。
俺らみたいな下位オスができることって2つしかなくて。ひとつは諦めて死ぬ。もうひとつは自分がアルファになることです。ナンパ師みたいな人たちって、必死で整形して、服全部買い替えて、話術も鍛えてて、すごいですよ。(ナンパ師を)バカにする人もいるけど、結局セックスできてるのはどっちだ、って話なんです。