挨拶しない人を認める職場に…
「武士道、つまり、日本の男性たちが守ってきた“道”には、義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義の7つの徳目があります。今回の挨拶の議題になっているのは“礼”の徳目に当たります。人と人が関わるときは礼儀が大事です。朝一に人と会ったら『おはようございます』。何かしてもらったときは『ありがとう』。間違ったことをしてしまったときは『ごめんなさい』。
ちょっとした定型文かもしれませんが、ときには一定の動作を交えながら相手に気持ちを伝えることは円滑な人間関係を築く上で大事です。しかしながら、礼儀が先行しすぎることはよくないと説くのが武士道です。礼儀はあくまで思いやりの心が形となって表れたものでなければならないのです」
礼儀が先行しすぎている人のよくない例としては、巧みに人をだまして世渡りうまくやっていこうとする者や愛想はよくても内実がともなっていない者などが挙げられるという。
「次は“徳”の説明ですが、“徳”の対義語は“法”です。徳と法は対極にある概念なので、単に法を守ることが徳になるわけではありません。ルールがなくても行なわれる慈善行為こそが徳です。その意味で、挨拶は確かに重要ですが、他人に押し付けるようなものであってはならないと思うわけです」
以上が今回、1年半以上の時を経て大炎上してしまった月々さんの意見だ。最後に1年半前と現在で、気持ちに違いはあるのか聞いた。
「特にないですが、私自身、挨拶を強要する職場と挨拶を強要しない職場を経験した結果、やはり挨拶しない人を排除する職場よりも、挨拶しない人を包摂する職場のほうがみんながいきいきしているなと感じます」
SNSでふいに巻き起こった挨拶論争。何はともあれ、挨拶の大切さを改めて考える機会になったようだ。
取材・文/集英社オンライン編集部