まったく意味のない日本の健康診断

日本の健康診断では「正常」の数値を「健康と考えられる人の平均値」をもとに相対評価で決めているので、それぞれの体質や生活状態は加味されません。

だから正常値であっても病気にならないわけではなく、異常値とされた人が病気になるという明らかなエビデンスが存在しない診断なのです。

しかも、健康診断の検査データが正常になったからといって長生きできるというわけでもありません。

労働安全衛生法が施行され、会社が従業員に健康診断を受けさせることが義務化されたのは1972年なので、今の平均寿命くらいの80代の男性の多くは、若い頃から毎年健康診断を受けていたはずです。

一方、80代の女性は専業主婦やパート勤めが長かった人のほうが多いので、大半の女性はほとんど健康診断を受けていません。

ところが1970年代と現在とで比較すると、平均寿命の男女差はむしろ大きくなっています。健康診断が本当に役に立つのなら、ずっと受け続けている男性の平均寿命はもっと延びてもいいはずなのに、現実にはあまり健康診断を受けていない女性の寿命のほうが延びているのです。

健康診断を受ければ、何らかの数値に異常が出ないことのほうが珍しいのでしょうから、結果として余計な薬を飲まされ、寿命が延びない―。

健康診断というものが、一切結果につながっていないのは、まさにそれが原因なのではないでしょうか。

また、高齢者の多い夕張市では大きな市民病院が廃院になり19床の有床診療所となってから、かえってがん、心臓病、脳卒中による死亡が減り、老衰で亡くなる人だけが増えるという現象が起きています。

冬の夕張山脈
冬の夕張山脈

「夕張パラドックス」と呼ばれるこの有名な現象も、健康診断代わりのようなこまめな病院通いが、メリットどころかデメリットをもたらす可能性をよく示唆していると思います。