栄養不足に悲鳴をあげるシニアの体

若い頃であれば、必要量に足りていない栄養素があったとしても特に問題は起こったりしないのですが、年齢とともに栄養素の吸収効率が悪くなるせいなのか、高齢者の体は「栄養素が足りていないこと」にすぐに反応します。

例えば亜鉛が不足すると味覚障害を起こすと言われますが、若い頃は意識してそれを取ろうとしなくても、そのようなことはまず起こりません。

けれども高齢者の場合は、ほんのちょっと亜鉛が不足しただけでも、如実に味覚障害の症状が出てくるのです。だから、さまざまな栄養素の必要量をきちんと摂っていなければ、いろいろ困った症状が出てくるわけです。

年齢を重ねるほどあらゆる不調が生じるのも、栄養不足による影響が出やすいことと無関係ではないでしょう。

摂りすぎが問題にされがちな塩分も、不足すれば、疲労感や食欲低下といった症状が出てきます。

年齢を重ねるほど、必要なナトリウムを体の外に出さないようにする腎臓の能力が低下して貯留することができなくなるので、必要なぶんまで尿と一緒に排出してしまうこともあります。

ひどい場合には、血液中のナトリウム濃度が低くなりすぎて、意識障害や頭痛などを起こす低ナトリウム血症になってしまうこともあります。若い人より高齢者のほうが熱中症を起こしやすいのも、必要な塩分が体内から失われやすいのが原因です。

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栄養不足の原因は「フードファディズム」

高齢者の体の不調の原因の多くは栄養不足にあると言っても過言ではありません。

だからこそ年齢を重ねてからは、体に良いものをたくさん摂ることよりも、不足する栄養素がないようにすることのほうが大事なのです。

「この食べ物が健康にいい」とか「認知症の予防になる」みたいな話を聞くと、そればかりをせっせと食べる人は多いですが、同じものばかりを食べていると、栄養が偏ったり、足りない栄養素が出てくる可能性が高くなります。

テレビからの情報に惑わされがちな日本人は、特定の食品が健康に良いと誇大に信じ込む「フードファディズム」に陥りやすいのですが、特に高齢者の場合は、同じものばかり食べるのではなく、できるだけ多くの種類の食べ物を満遍なく食べること、つまり雑食が理想的なのです。