東南アジア産、ネッタイシマカの脅威

デング熱を運んでくるのは感染した人間だけでないと谷川氏。

「厄介なのが東南アジアなどの熱帯地域に生息して、デングウイルスの主たる媒介蚊である『ネッタイシマカ』。飛行機に紛れこむため、ほぼ毎年のように成田空港をはじめとする国際空港で見つかっています。

ネッタイシマカは日本に生息する蚊よりも嗜好性が高くて積極的に血を吸うのが特徴で、国内のヒトスジシマカよりもデング熱をはじめとした感染症を媒介しやすく、ウイルスの感染を広める可能性も高いんです」

ネッタイシマカは熱帯地域のような高い気温でないと生きていけず、日本では定着しないとされているが、脅威であることに変わりはない。しかも、このネッタイシマカ、近年、新たな特性も発見されたという。

血を吸うネッタイシマカ(提供/国立感染症研究所)
血を吸うネッタイシマカ(提供/国立感染症研究所)

「ネッタイシマカの中には、殺虫剤に対して抵抗性をもつ個体がいることも確認されています。
インバウンドが増加の一途をたどる日本にも、ネッタイシマカが侵入するかもしれません。そして、殺虫剤もきかないとなれば、今年の夏はデング熱が流行することも十分に考えられるのです」

デング熱への対策は?

「一般の家庭でできるものだと、ボウフラはコップ1杯の水でも増殖するので、ベランダなど自宅の周りに水が溜まりそうな置き物はできるだけ置かない。そして、窓を開ける際は必ず網戸を閉めること。
外出の際は虫除けスプレーを散布して、長袖などを着て露出部分をなるべく減らすのも有効かと思います」

蚊の恐ろしさの真骨頂は刺されたかゆみではなく、病気を媒介すること。これを再認識して、今夏を迎えるべきだろう。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班