「尊い」を越える表現は「恐怖」…「米津玄師こわい」と書いたブロガーが伝授する、他人に“伝染させる”文章の究極テク
SNSやブログなどで、若い人たちを中心に「尊い」という表現で人やモノなどを称えるシーンがある。だが、「尊いを越える究極の表現は『恐怖』」と語るのはエンタメ系トップブロガー「かんそう」さん。
彼が培ってきた文章にまつわる「考え方」「書き方」をまとめた著書『書けないんじゃない、考えてないだけ。』から一部抜粋、再構成してお届けする。
『書けないんじゃない、考えてないだけ。』#3
感情の矢印を2方向に向ける
私の米津玄師に対する感情が少しは伝わったでしょうか。米津玄師は元々「ハチ」という名義でニコニコ動画を中心に活動していた「知る人ぞ知る」存在だったのです。それがいつのまにか、誰もが知る国民的アーティストへと変貌していました。
地下に潜んでいたはずの音楽の化物が地上の人間に擬態し、我々アホにもわかりやすいような曲を作り、それがまんまと歴史に残るヒット作になってしまう。さらにこの『Lemon』を皮切りに、出す曲出す曲で特大のヒットを飛ばしている……私はそれがものすごく怖い。
もはや軽々しく「ファン」などという言葉すら使えませんでした。
まさに「恐怖」。
他人に伝染する「好きすぎて怖い」
そして、この「好きすぎて怖い」という「恐怖」の感情は他人にも確実に伝染していきます。
例えば、「◯◯が好き」という想いを第三者に伝えるとき、その感情の矢印は一方向にしか向けられていません。会話の例を用いて説明しましょう。
例A(通常)
「俺さ、リンゴがマジで好きでさ〜」
「へぇ〜、なんで?」
「だって甘くておいしいじゃん!」
これでは、俺がどれだけリンゴが好きで、そのリンゴがどれだけ甘いのかが全く伝わりません。「だから何?」としか思われない。
しかし、この感情を「恐怖」として伝えるとこうなります。
例B(恐怖)
「俺さ……リンゴがマジで怖いんだよ……」
「え……? な、なんで……?」
「いくらなんでも甘すぎる……あの甘さは常軌を逸してる……」
例A(通常)は「好き」という感情しかありませんが、例B(恐怖)は「好き」と「怖い」が混在し、感情の矢印が2方向に向いているのがわかるでしょうか。
「好き」だけを相手に伝えても、相手がその対象に興味がなければそこで話は終わってしまいますが、このように「好き」に「怖い」を混ぜることで、相手に2つの方向からアプローチをかけることができます。「そんなに恐怖を感じさせるほどおいしいリンゴだったら一回食べてみるか……」と思わせるチャンスが増えるのです。
これは会話の例ですが、文章でも同じことです。大切なのは「恐怖ポイント」を見つけることです。
対象のどんなところに最も恐怖を感じているのか。
アーティストなら「曲」なのか「声」なのか「歌詞」なのか「制作過程」なのか「生い立ち」なのか。それを知り、深掘りすることで、自分にしか書けない快文が完成します。
文/かんそう 写真/shutterstock
2024/5/22
1,650円(税込)
352ページ
ISBN: 978-4763141378
「面白かった」「やばい」しか出てこない人でも、
書きたいことがとめどなく溢れてくる!!
★文章で大切なのは、テクニックよりも
「書く前にどれだけ考えるか」「どうやって考えるか」
「せっかく感動したのにうまく言葉にできない」
「SNSやブログで読まれる文章を書きたい」
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「書けない」悩みには、共通する原因があります。
それは、文章テクニックの上手い・下手ではありません。
「書く前の考え方」を知らないことです。
本書では、「文章力」を
「文章について本気出して考えた時間の量」と定義しています。
書く前に、どうやって考えるか。
書く前に、どれだけ考えられるか。
考えたあとに、読まれる文章をどうやって書くか。
考える→書く
これさえできれば、あなたの想いや感動を
何千字でも何万字でも書けるようになるのです。
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常軌を逸した表現力で読者の人気を集め続ける著者が、
培ってきた文章にまつわる「考え方」「書き方」を
余すことなく伝授します。
★アナウンサー宇内梨沙さん大絶賛!
「小学生の頃、書き方を教えてもらったわけでもないのに、
夏休みになると読書感想文が宿題になり、苦しんでいた日のことを思い出しました。
この本を読んで
『型にはまるな、自由に書け』と背中を押されたかった。」
【目次より】
■第1章 「文章力」の正体
・文章力=文章について本気出して考えた時間の量
・「文章力」は文章を書かない人間が作り上げた幻想
・文章とは書く前から書いている など
■第2章 「言語化」気持ちや感動を言葉にする
・自分の中に「イマジナリー秋元康」を飼え
・「自分の感情の海」に深く潜る
・「一」を徹底的に愛する など
■第3章 「感情」を制するものは文章を制する
・感情が溢れた文章には狂気が宿る
・テクニックを凌駕する圧倒的なパワー「怒」
・尊いを越える究極の表現「恐怖」 など
■第4章 「刺す文章」を書く
・刺す文章は「広いあるある」と「狭い固有名詞」
・文章にこだわりを持つ 文章速度/視線誘導
・句読点、改行は添えるだけ など
■第5章 「構成」で読者の目を集める
・タイトルに命を懸ける
・摑みは読者の息の根を止めるつもりで
・「起承転結」の「承転」はシカトして「起結」と親友になる など
■『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を読んで、考えてから書いてもらった。