医者も社会も依存症について知らなすぎる 

ナカムラ これまでにも啓発を目的にした映像作品はありましたけど、日本の場合、たとえばアルコールでつぶれていく人を悲惨に描いたりとか、基本は「こうならないようにしましょう」という描き方なんです。

田中 そんなつまんない映画、誰も観ませんよ。

ナカムラ でも海外の啓発映像を見ると、回復していく様子をきちんと描いていたりする。だったら日本でもそれをやったほうがいいと思って、この映画を作りました。回復のステップにはいろいろな方法があるけれど、共通しているのは「仲間と一緒に治していく」ということなんです。
 

――担当の医師だけでは回復は難しいものなのでしょうか。

田中 だって“先生”と名のつく人なんて、みんな嫌いでしょう? あっ、それは私だけ!? でも、実際に“先生”と呼ばれる人の言うことなんて聞きたくないって人も結構いるんです。医者はマストじゃないですよ。でも自助グループはマストだと私は思ってます。医者から偉そうに何か言われて「お前に何がわかるんだ」って思うぐらいなら、同じ病気で苦しんでいる仲間たちと「お前もやっちゃったか〜」とか言いながら、一緒に治していったほうがいいに決まってる。

高知 俺がフォローするのも柄じゃないけど、病気だと診断してもらうときには医者は必要ですよ。そこは素人で判断しちゃダメ。

高知東生
高知東生

田中 そうね。高知さん、偉い。あとは裁判になったときとか、傷病手当がほしいときとか、重複障害があるときとか、そういうときにも医者は必要ね。それ以外、回復する過程においては、私は医者よりも自助グループの仲間のほうがずっと重要だと思う。

高知 紀子さんは自分も依存症になった当事者であり、長年「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表として活動してきて、その経験からこう言っているわけだけど、俺も気持ちはすっごいわかるの。だって国家資格を持った医者であっても、依存症についての知識がない人が本当に多いから。医者だけじゃない、社会もそう。
 

田中 それと間違えないでほしいのは、依存症の人が行くのは精神科。マスコミでも心療内科とか書いている場合があるけど、違います。精神科です。医者もマスコミもいい加減なんですよ。自分たちが勝手に描いたストーリーに当てはめようとしてさ。