優しい借金取り

雑草の卵とじ炒めだった。

「これ食え。まだマシだろ」

卵はおそらく、借金取りが買ってきたのだろう。俺は言われるがまま、その雑草の卵とじ炒めを口にする。

う、うま!!! あんなに不味かったあの雑草が……まさか卵一つでこんなにフワッと美味くなるなんて。卵で雑草の臭みがまろやかになってめちゃくちゃ美味い。俺は腹が減っていたことを瞬間的に思い出し、思わずがっついた。そんな俺を見ながら借金取りは、

「……醤油、もうちょっとかけてもいいかもな……」

と、顎のあたりをポリポリと掻きながら、呟いたのだった──。

今考えれば、人は見かけによらないな、と思う。

〈すがちゃん最高No.1〉借金取りに作ってもらった雑草の卵とじ炒めのうまさ…中1、一人暮らしの思い出_4
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そんな感じで、なんだか不器用な父親のようなムーブで借金取りに料理を作られたことをきっかけに、「このままではまずい」と、俺は料理の腕を磨こうとするのだが、どうやって磨いたかはぜひ本編をご覧いただきたい。

あの後も借金取りからの電話はかかってきたし、料理を作ってもらったからといって恐怖心が取れるものでもなかった。でも、父親ムーブをされたことで、1ミリだけ、ほんのすこーーしだけ怖くなくなったのも事実だ。

ある時、実際の父親が家に偶然戻ってきているところに、借金取りから電話があった。いつもなら「いない」というところが、今日はいるから助かったー、てか親父いるから電話出なくていいわーと安心していた。のだが、親父は俺に向かって、

「お前でろ! で、いないって言え!」

本当の親父は、見かけ通りの親父だった。


写真/shutterstock

 

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12歳、中1の春。父親の「1抜けピ」を皮切りに、俺の家族は0になった。そんな絶望的な状況の中、俺は一人、こう思った……。「なんか、もしかして今、カッコいいか?」
***

(もくじ)
序章 中1、12歳、一人暮らし

第一章 “カッコつけ”は家系の呪い 
オヤジ最低オンリーワン 
家取り戦争 
かっちゃんと恐怖温泉 
ダンディズムの塊 
変人婆ちゃんとの二人暮らし 

第二章 山形の狼は、助けを借りない 
山形に住む12歳の狼 
友達の家から、家事を盗む 
知らない霊媒師 
カマを持った泥棒VS.俺 
世にも奇妙な親父と五人の子供たち 
『高校進学が如く』 
伝説の携帯電話 
帰ってきた婆ちゃん 

第三章 肩まで地下につかった芸人 
ネタバラシ 
大人になった山形の狼 
第七世代に抜かれる地下芸人 

第四章 ぱーてぃー前夜 
ギャルと親父 
ハイブランドポーズの誕生 
癌が治る水 
親父、死す 

終章 一人暮らしになる夜の奇跡 
“あの日”の夏祭り、占師の予言

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