「本当に、一人なんだな」
「ちょっとごめんな。見るぞ」
と、他の部屋も次々と確認していく。もちろん誰もいない。一人暮らしをしだしてから、俺はリビングと自分の部屋くらいしか開けていなかった。だから他の部屋には全く〝生活臭〞がしないのだ。ゴッツイ借金取りはそれを感じ取ったのか、
「本当に、一人なんだな」
ぽつりと呟いた。そして、
「お父さん、どこ行ったんだ?」
と俺に尋ねてくる。が、
「わかんない」と答えるしかない俺。中学一年生と2メートル(仮)のゴッツイ借金取りの間に、なんとも言えない微妙な空気が流れた。そこで、借金取りがあるものを指差した。
「なんだこれ」それは、俺がさっきまで食っていたニラっぽい雑草の醤油炒めだ。
「……雑草、公園で採ってきた」
と答えるしかない俺。
「こんなもん食ってんのか」
たまらなく恥ずかしい。なんだこの感情。怖いし恥ずかしいしもうほんと誰か今すぐ助けてくれ。俺が恥ずかし怖いという聞いたこともない謎の感情にさいなまれ顔を伏せていると、
「おい、ちょっと待ってろ」
と言って、借金取りは家を出ていった。え?なに?なんか取りに行ったの?窓ガラスだけじゃなくて、今度はバールみたいなもんで、家中壊すつもり?
すると、バッとドアが開いた。借金取りは、わりとすぐに帰ってきた。そして、そのままの足で、テーブルにあった雑草炒めを手に取った。
あー捨てないでー。そんなもんでも、クソまずいけど、俺の晩飯なんすよー。いやまあ、また摘んで来ればいいだけだけど……。
そう思っていると、ゴッツイ借金取りは、フライパンを火にかけ始めた。借金取りの手には卵が握られている。その場にあった適当な調味料などを使い、サッと手際よく料理を始めるゴッツイ借金取り。しばらくして俺の目の前に出されたのは……