面接できわどい質問もしやすい
一方で、企業側は、どのような理由でナイトワーカーの女性を採用するのか。
日本とカンボジアを拠点に活動する広告代理店『レプリネット・カンボジア』は、これまでヒルコレスナックで10人近くの従業員を採用してきた。いずれもカンボジアの不動産を売り込む営業部隊として、ナイトワーカーをリクルートしている。
「当社では、企業の社長が集まるような交流会や定例会に参加して、そこでカンボジアの不動産に興味はないかと営業をかけるんです。そのとき、どうしても中年のおじさんが声をかけるより、30歳前後の女性が声をかけたほうが食いつきがいいわけですよ。
いまどき普通の面接だと、結婚しているかどうかを聞くだけでハラスメント認定されてしまう時代です。ただ、ヒルコレスナックだとプライベートなことも聞きやすい。将来的に結婚や子供を考えているかどうかを聞くことによって、カンボジアに長期出張できるかどうかなど、お互いにどういう仕事量や形態で進めていけばいいのかが固めやすいです」
そう語るのは、レプリネット・カンボジア代表の北野岳氏だ。
現在カンボジアは、年5.5%ほどのGDP成長率を誇るにもかかわらず、日本の大手デベロッパーの参入が少ないため、レプリネットはとにかく不動産を捌きたい。そこで、いかに効率よく不動産を購入してもらえるか考えた結果、ヒルコレスナックでナイトワーカーをリクルートをしようと考えた。
しかし、夜職の女性を雇い続けることで、企業としての信頼やイメージに影響はないのか。
「当社の女性社員が、交流会を通して他社からスカウトされる話もよく聞きます。他の企業からしても、前職が水商売だからマイナスになるのではなく、その女性の人当たりややる気を重視している企業も一定数いるかと思います」
ナイトワークを始めた事情は人それぞれだが、30歳を超えてからでも昼職への門戸はそれなりに開かれているようだ。
取材・文・写真/佐藤隼秀