10年以上デリヘルに勤務
西谷さんのように即採用につながるケースもあれば、思うように転職ができない場合もある。
ヒルコレスナックで1年働く横井真緒さん(仮名・32)は、現在も週3~4日デリヘルで働きながら、いまだに昼の世界に飛び込めずにいる。彼女の場合、職種や給与、雇用体系など、働き方の条件は絞っていないものの、いまひとつピンとくる仕事に出会えていないという。
なかなか転職を決断できない背景には、風俗業界に長年携わってきた複雑な事情があった。
横井さんがデリヘルを始めたのは20歳の頃。高校を卒業したのち上京して、正社員としてスーパーで働くものの、母から頻繁に仕送りを求められたため、稼ぎのいい風俗の世界に足を踏み入れる。
「実家に借金があり、高校卒業後から親に仕送りを求められるように。最初は生活費として毎月10万円ほどほしいと言われ、それ以外も父の入院費や車検代を求められるようになりました。スーパーの給料では生活もカツカツなので、繁華街の駅周辺にいたスカウトの方に自分から声をかけて、デリヘルの仕事を斡旋してもらいました」
21歳でスーパーを退社して、デリヘルで週5回ほど働くようになる横井さん。月収は100万円を超える月もあった。シフトも融通が効きやすく、職場の人間関係も気にしないデリヘルの仕事は性に合っていたようで、特に不自由なくそのまま働き続けた。
「いまさらなにをしていいのかわからない」
それでも30歳を迎える頃には、同年代のキャストも夜職をあがっていき、漠然とした不安を覚えた横井さんは、2022年末からヒルコレスナックでの勤務を始める。これまで約40社ほどの人事とマッチングを果たしたが、就職には至っていない。
「勤務中に企業の方と話すのは楽しいのですが、いざとなると自分が堅い仕事をやっているのが想像できないんです。昼職経験はほぼないし、役立ちそうな資格もない。職場の人間関係もうまくできるか不安なので、本当に自分は求められている人材なのかと尻込みしてしまう。
デリヘルの場合は、性的サービスを提供しているので、よくも悪くもダイレクトに自分の需要があると感じられます。もちろんストレスもある仕事ですが、昼職に就いて自分が役に立たなかったらどうしようと不安になるストレスのほうが大きいです。
それに私は結婚願望もなければ、子供がほしいとも思いません。趣味はお酒ぐらいで、希望する職種もない。とにかくふわっとしたまま30歳を超えてしまったので、いまさらなにをしたいのかわからないんです。
ただ同時に、自分の需要がだんだん減っていくのは痛感しています。熟女系の店舗に在籍するのもいいんでしょうけど、それでもいずれ限界は訪れる。いまのところ40歳までに風俗を卒業しようとは思っていますが……」
いくらマッチングの機会に恵まれていたところで、結局は本人のやる気しだいによる部分も大きいのかもしれない。