長期独裁プーチン政権の読み方

5月7日、クレムリンでプーチンの大統領就任式が行われました。プーチンの大統領就任は5回目。途中、首相に退いて事実上の院政を敷いた時期もありますが、現在にいたるまですでに24年間も政権のトップにいます。

任期は今後6年間ですが、2020年の憲法改正で次の出馬も可能になっているので、本人が健康であれば、さらに6年追加で12年後の2036年まで独裁者の地位にいることが可能となります。現在71歳。2036年には83歳で常識的には引退の年齢ですが、彼がその気になれば再びの憲法改正で、さらに続けることも十分にあり得ます。

大統領就任式でのプーチン大統領 写真/共同通信社
大統領就任式でのプーチン大統領 写真/共同通信社
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とにかくロシアでのプーチンの独裁権力は盤石で、ロシアの政官界でも軍でも、誰もがプーチンへの忖度を最優先しています。プーチンの独断で開始されたウクライナ侵略がもう2年以上も泥沼化していて、ロシア軍にも30~50万人もの大量の死傷者が出ていますが、ロシア国内ではプーチン批判はタブーなので、ウクライナへの侵略も一切、批判されません。

今回の大統領就任式を含め、プーチンはしばしば自分の声でロシア国民向け演説をしますが、それは常に自己正当化で貫かれています。今回も「すべての計画を実現させ、共に勝利しよう」と語っていますが、この計画はプーチンの計画ですから、つまりは今後も自分の方針は変更しないし、国民は文句言わずに自分に従えという意味になります。

前述したようにウクライナ戦は泥沼化しており、メディアではしばしば停戦の可能性について報じられますが、プーチンは侵攻開始時に自ら語った目的である「ネオナチ政権の打倒」つまりはウクライナ政府の打倒、と「ウクライナ軍の解体」つまりはウクライナ軍の降伏を取り下げませんので、プーチンの言葉が実現されない内容での停戦は現実的ではありません。

今回の大統領就任式での演説では「西側と対等な立場でなら対話は可能」と主張していますが、これは立場を軟化させたわけではまったくなく、前述したようなロシア側の要求を西側がのむならば、という従来の発言と変わりません。彼はロシア国内で長年にわたり、誰よりもタフなリーダー像を強く打ち出しており、間違いを認めて訂正するということはしません。ロシアでは、そんなプーチンの言葉を正当化することだけが、戦争を含むすべての政策で絶対的に最優先されます。

では、プーチンはどういう手段でこれほどの独裁権力を手に入れたか、経緯を簡単に説明します。