スマホ普及率98%!? 台湾は本当にデジタル社会なのか?

コロナ対策におけるスピード感の一因は、オープンガバメントの思想が定着していることも挙げられます。これを推進しているのもオードリー・タンでした。

民間からのさまざまな助言や政策提言をどんどん吸い上げるプラットフォームがあることで、次々と対策を打ち立てていける。マスクマップもそうでしたが、まずは国が持つビッグデータをオープンにして広く有効的に活用していく、というのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の基本です。

台湾では日本よりも早い2003年に国民背番号制(日本でいうマイナンバー)が施行されており、健康情報も含め、システムに全国民のデータを紐づけできるようになっています。

こうした下地もあって、2022年にはデジタル発展省を設置、初代大臣には彼女が就任しました。

近年では、デジタル大国がパブリシティイメージとなった 写真/Shutterstock.
近年では、デジタル大国がパブリシティイメージとなった 写真/Shutterstock.

台湾のデジタル化構想は、リトアニアなどの小国におけるデジタル技術を活用したスマート国家がイメージにあると思われます。

確かに、日本人に比べて台湾人はデジタルデバイスへの親和性が高い。台湾ではスマートフォン(以下、スマホ)の普及率が98%ともいわれ、街では老人たちがスマホを使いこなしている姿もよく見かけます。

デジタル化へのハードルは低いのかもしれません。

ただし、私が実際に台湾で生活してきた実感をお話しすれば、本当に台湾はデジタル社会なのか?と思うことも少なくありません。

なにせ台湾は日本以上のハンコ文化です。何をするにも書類にはハンコがないといけない。後はインフラの問題です。台湾におけるインターネットの普及率は、東アジアで日本、韓国に次ぐ3位。しかも回線が遅く、地方ではアクセスの確保に苦労するときもあります。

実像と虚像という部分が、台湾のデジタル化については存在しているように思います。

ただ、先ほどお話ししたように、良いとなったら即実行の国民性ですから、デジタルを活かしたライフスタイルに変えていこうというモチベーションは高い。現与党の民進党も新
しい時代に即した政策を遂行するところに人気を保つ秘訣があるので、国を挙げてのデジタル推進はしばらく続くだろうと思われます。