婦人用支出額の6割が蒸発する事態に

ファッション情報メディアを運営するTOCREATEITの調査(「バッグに関するアンケート調査」)によると、バッグ購入予算で1万円未満と回答したのは66.2%。1万円以上3万円未満は25.6%に過ぎない。

さらに選ぶ際のポイントとしているのが、「色やデザイン」が25.4%、「サイズや収納力」が24.2%、「値段」が19.5%。「ブランド」は3.6%だ。消費者は1万円未満の手ごろな価格で気に入ったデザインのものを選び、収納力などの機能性を重視していることがわかる。

この傾向はファッション全体に当てはまる。

家計調査で単身世帯の婦人用洋服の年間支出額を見ると、2023年は1万2901円だった。2000年は3万2358円である。23年間で婦人用洋服への支出額の6割が消失したのだ。コストパフォーマンス重視の時代である。

※家計調査より筆者作成
家計調査より筆者作成

現在の大学生においては、一万円以下で買えるキャンバス生地のトートバッグが主流だ。

そもそもブランド購入のハードルが上がっているため、背伸びをするのであれば「LOUIS VUITTON」や「Gucci」などのわかりやすいハイブランドを選択する。誰もが知っているブランドであるため、マウントが取りやすい(満足度が高い)からだ。いくらデザインが優れているとはいえ、2~5万円程度のサマンサタバサではコストパフォーマンスが悪いと感じてしまうだろう。

それであれば、サマンサタバサはかつてのように広告宣伝に力を入れてブランド価値を高めればいいと考えるかもしれない。しかし、ファッションアイテムの宣伝の難易度は劇的に上がっている。

電通の「日本の広告費」によると、2004年の雑誌の広告費は3970億円だった。2023年は1163億円である。1/3まで縮小した。その一方で、インターネット広告は1814億円から3兆3330億円と18倍に跳ね上がっている。

 

※日本の広告費より
日本の広告費より

かつてはファッション業界と雑誌が流行を創出するのが当たり前だった。それがインターネット広告にとってかわられたことにより、「バッグ 1万円 20代向け」などと消費者の細かなニーズに応えなければならなくなったのだ。インフルエンサーも全盛期のセレブほどの影響力は持てず、サマンサタバサが得意としていたこれまでの手法が通じなくなってしまったのだ。