「スパイ」にされた親中派日本人の記録
2016年7月に拘束され、スパイ罪で懲役6年の実刑判決を受けて服役した日中青年交流協会の鈴木英司元理事長は帰国後、体験記を出版。ここから中国当局の荒っぽい手法が見えてきた。
「元理事長によれば、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記の義理の叔父である張成沢氏が処刑され大騒ぎになっていた時期に、中国の知人との会話でこの話題を持ち出したことが『中朝関係の秘密情報を探った』とされたといいます。
張成沢の処刑は北朝鮮が発表し、世界中に報道されたので秘密でも何でもない。後にTBSが入手した元理事長の『判決書』には、『被告人は日本のスパイ組織の代理人の任務を受け、長期的に我が国の国家情報を収集、報告した』と書かれていました」(国際部記者)
ここにある「日本のスパイ組織」とは公安調査庁を意味するとみられ、元理事長も日本メディアの取材に、同庁の調査官と接触したり、謝礼をもらったりしたことを認めている。
とはいえ、企業の駐在員を中心とした現地の日本人社会は数年前まで、日本人の拘束が増えていても大きな危機感は感じていなかったようだ。というのも「捕まるような人とビジネスで来ている自分たちとは別だ」との意識があったからだと北京駐在経験者は語る。
「鈴木元理事長のような人が捕まったことは日本のメディアも報じていたので知っていましたが、はっきり言って“他人事”でした。というのも中国当局がスパイだとして拘束した人の中には、『公安調査庁からカネをもらって中国の軍事基地の写真を撮りに来た』といったうわさが出る人もいた。要するに“本物”か、スパイの真似事をした人が捕まっているだけで、自分たちとは別世界の話だと思っていたんです」(北京駐在経験者)