これまでにも17人がスパイ容疑で拘束 

林芳正官房長官は4月22日の記者会見で范氏が失踪した情報を日本政府が把握していることを前提に「関心をもって注視しているが、事柄の性質上これ以上のコメントは差し控えたい」と話した。全国紙デスクが話す。

「范氏は昨年2月に実家のある上海に一時帰国し、予定していた昨年4月までに日本に戻りませんでした。亜細亜大には『病気療養に入る』と連絡がありましたが、現在日本にいる家族は連絡が取れない状態です。

音信不通になる前に『当局者に同行を求められ、尋問を受けた』ともらしていたとの情報があり、拘束されたとみられますが、何の発表もありません。大学のホームページによれば范氏は中国の環境エネルギー戦略などを研究していましたが、拘束の理由が何なのかも日本側では見当がついていません」

范雲濤教授(写真/共同通信社)
范雲濤教授(写真/共同通信社)
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日本の大学に所属する中国人研究者が当局の拘束で日本に戻れなくなるケースはこれだけではない。2019年には北海道教育大の教授が一時帰国中に拘束・起訴され、また、神戸学院大の教授も昨年夏に一時帰国後、消息を絶っていることが今年3月にわかっている。

「中国当局は日本在住の中国人研究者を標的にし、スパイ容疑をかけている可能性があります」と話すのは全国紙デスクだ。

「それだけでなく、中国当局による日本人の拘束も続いています。実際、中国では2015年以降、スパイ容疑などで邦人17人が拘束されており、そのうち5人はいまだに帰国できていません。どの事件も中国当局は拘束の具体的な理由を発表せず、裁判も非公開で行われます。

日本の外務省は邦人の拘束がわかるたびに解放を求めますが、これを中国が聞き入れたことは皆無。一度拘束されると数年に及ぶ刑期の後、国外追放になってようやく日本に帰ってこられるのです」(前同)