アマゾンの行動原理がわかる「3つの理念」
コロナ禍を前後して、アマゾンにはさまざまな変化がありました。
一方で、創業以来、一貫して変わっていないこともあります。
創業者のジェフ・ベゾスは「アマゾンは、地球上で最もお客様を大切にする企業である(Be Earth’s most customer-centric company)こと、お客様が買いたいものを何でもオンラインで見つけられるようにすること」を徹底してきました。
最近は「Customer Obsession(顧客のこだわり)への対応」という言葉もよく使われるようですが、その根本にあるのは顧客中心主義であり、カスタマーセントリックに変わりはないと思います。
カスタマーセントリックということで、私が常々感心するのが、返金スピードの速さです。
以前のことですが、アマゾンで食器を買って到着を待っていましたが、結局、宿泊先を出るまでの間には届かず、キャンセルすることにしました。すると、2、3時間のうちに返金されていました。
アマゾンでは「24時間以内の返金」がスタンダード。「アマゾンの返金スピードは全米で№1」という、ある調査機関の公表データもあります。
日本で返品するという場合、アマゾン以外でこうしたスピーディな体験をすることはあまりありません。商品に疵があったり、傷んでいたりというときでも、「まず、とにかく証拠写真を送ってほしい」などと、顧客をまるで信用していないような対応をするケースをよく聞きます。
販売店からすれば返品理由の確認は必要ですが、顧客からすれば「悪いのは不良品を送ってきた販売店。それなのに、なぜ、こちらからそんなことまでしなければならないのか」と憤るのはよく理解できます。特に対面でのやりとりを前提としないECの場合、返品を受け付け、いち早く返金処理をしてしまうほうが、オペレーションも複雑にならず、その後の顧客との関係性維持においても得策だと私は思います。
なぜ、アマゾンはこのようなスピーディな対応を取れるのか?それは、アマゾンの行動原理である3つの理念を知ることで理解できるでしょう。その3つとは、
「常に顧客中心に考える」(Put the customer first)
「発明を続ける」(Invent)
「長期的な視野で考える」(And be patient)
です。宅配クライシスのとき、「どうやって、物流危機を乗り越えますか」と日本経済新聞の記者から質問をうけたアメリカ本国から来たアマゾンのロジスティクスの本部長は「発明により乗り越えます」と答えていました。これを聞いて「ベゾスの考え方が浸透している」と感心したことを覚えています。
ベゾスはECサイト「アマゾン」を立ち上げるにあたって、次のような設問を立てました。
「What’s not going to change in the next 10 years?」(今後、10年間、変わらないことは何か)
それに対する答えが、
「Customers Want(顧客が求めるのは)Vast Selection(幅広い商品)、Low Price(低い価格)、FastDelivery(早いお届け)」です(図6-4)。
これらを実現する要として、アマゾンの物流は組み立てられていると思います。