娘の入学金が支払えなくなり公立へ変更
柳田さんらが進める集団訴訟の被害者グループで代表を務めているのは45歳、エンジニアの堀井裕太さん(仮名)だ。堀井さんは1400万円をこのSNS型投資詐欺によって奪われた。そのうち900万円は銀行3社から無担保のカードローンで融資を受けたものだ。
「これらの借金の返済額は月に約10万円もあるんです。寝るまで頭の中ではお金のことを考えていて、毎日ぐったりしてしまいます。もし、目の前に犯人がいたら刺してやりたいくらい精神的に苦痛です」
堀井さんには今春、高校入学した子どもと小学生の子どもがいる。今回、詐欺の被害に遭ったとわかったとき、真っ先に家族に謝ったという。
「上の子どもが第一志望の私立校への進学がすでに決まっていましたが、今回の被害で生活に一切余裕がなくなってしまった。高校の入学金や学費も支払うことができなくなってしまったので、娘の部屋ですべて話して理解してもらって、公立に変更してもらったんです。家族を泣かせてしまい……精神的にすごく辛いです」
堀井さんも、ただ投資の勉強をしようと思ってFacebookの広告をクリックし、佐々木さんや柳田さん同様、LINEグループへと招待されたという。
資金の振込先として指定されたのがベトナム人の個人口座だったり、関係のない法人口座だったりと、今思えば不自然な点はあった。それでも当時は「理由を説明されると素直に信じてしまう精神状態になっていた」という。そんな堀井さんが犯人に望むことは何なのか。
「まずお金を返してほしい。そして罪を償ってほしいです。何人もの被害者の人生をグチャグチャにしているのですから、同じ痛みを味わってもらいたい。被害者の中には『天国から地獄に落ちた』と話す人がいますから、詐欺師も地獄に落ちてほしい。
でも、法律やプラットフォームがいい加減で詐欺を取り締まれない面もあるわけです。詐欺を働ける環境をつくり続けたプラットフォームにも責任を取ってもらいたいですね」
基本的には虚偽広告について、掲載したプラットフォーマー(広告媒体)に責任を追及することはできないとされている。4月25日午後、SNS型投資詐欺に遭い神戸地裁に集団訴訟を起こした被害者4人の代理人弁護士らは記者会見を開き、「虚偽広告の掲載によって利用者に不測の損害を及ぼすことを予見し、内容の真実性を調査確認する義務があったにもかかわらずそれを怠り、広告料収入を得た」と主張した。
裁判の行方はSNS社会の一大関心ごととなっている。
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取材・文/中山美里
集英社オンライン編集部ニュース班