プラットフォームに詐欺広告を掲載した責任を問えるのか

Facebook やインスタグラム などのSNSで、前澤友作氏や堀江貴文氏といった著名人や、SBI証券や松井証券などのロゴを無断使用して証券会社を騙る偽広告による投資詐欺被害が急増している。

警察庁の発表によると、昨年、全国の警察が認知したSNS型投資詐欺(SNSを利用した非対面接触で金銭を騙し取る詐欺)は2271件で、うち1億円超の被害は26件。1件に対する最大の被害額は約3億4000万円、被害総額は約278億円となっている。このような状況に警視庁は専門の捜査班を立ち上げて対応にあたっている。

NPO法人「投資詐欺被害者の会」副理事長として投資詐欺被害者の支援と集団訴訟の呼びかけ活動を行う国府泰道弁護士は次のように話す。

「新NISA制度が始まるなど、国をあげて国民に投資を推奨していることも、投資詐欺への警戒力を低下させているひとつの要因でしょう。

現在はSNSが犯罪に利用されるツールとなっていますが、犯罪集団にこのようなツールを簡単に利用できないようにするのが、社会的責任ではないでしょうか。たとえば、かつて振り込め詐欺などの特殊詐欺によく利用されていた携帯電話は、現在では本人確認手続きが強化され、違反があった場合にはその利用が停止されます。SNSに対しても同様の対応が必要だと考えます」

前澤氏を語った投資詐欺広告
前澤氏を語った投資詐欺広告
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しかし、誇大広告や虚偽広告の責任を負うべきは広告主と考えられており、一般的には広告の場を提供しているプラットフォーマー(広告媒体)には罪を問えないとされている。

1989年9月に最高裁の判決が下された「日本コーポ事件」(新聞各紙面に不動産広告を掲載したにもかかわらず、物件の引き渡しも代金の返済もせずに売主の日本コーポは倒産。売買契約を結んでいた買主らが当該広告を掲載した各新聞社に対して損害賠償を求めて提起した事件)では、『広告内容の真実性をあらかじめ十分に調査確認する一般的な法的義務はない』とし、広告を掲載した新聞側の責任を否定した。

「ですが、このときの判決によれば『広告媒体が誇大広告・詐欺広告とわかる状況になったときは、広告媒体は掲載してはならず不法行為責任になる』ともしています。
Facebookに溢れている偽広告については、2023年夏に前澤社長は『自分の広告ではない』とSNS等で呼びかけています。つまり、それ以降は、詐欺疑念が生じるため、広告媒体は(偽広告を)掲載してはならない義務が生じます」(国府弁護士)