徐々に警戒心が薄れ、誘われるがまま入金
グループに入ると、そこでは投資についての活発なやりとりがされていた。Aさんは「指導者が投稿する投資情報は、新聞や他の投資記事と比較しても遜色のないまともなものでした」と感じ、そこから学べることがあるだろうと入会後1ヶ月はそのやりとりを眺めるだけだった。しかし、同じグループに入ってきたBという人物によって、詐欺の沼へと足を踏み入れることになる。
「そこでBは『子どもの学費準備のためにジュニアNISAをやっているが、この方法でやっていくことが本当に正しいのかわからない』『無事に学費を準備できるか不安だ』というようなことを投稿していたんです。私にも子どもがいるため共感しまして、その人と個別にやりとりをするようになりました。
お互いに悩みを相談したり、励ましあったりしているうちに、徐々にガードが緩むというか……。今、振り返れば洗脳されていたような状態だったなと思います。まるで恋人かというくらいに、頻繁に連絡がくるんです」
そのうち、グループの指導者からFXに誘われる機会があった。もともとFXはやるつもりはなかったが、Bとのやりとりで警戒心が薄れていたAさんは、ものは試しと指定された口座に入金してしまう。
「指示通りにやったら儲かったので、これはいいのかもしれないと思い、ますますガードが緩み、さらに10万円、その次に10万円、そして5万円と追加で入金していってしまいました」
ちょうど3回目の入金をしてしばらく経った後、Aさんの身内に不幸があり、まとまったお金が必要になった。
「入院費の支払いなどに充てるため、投資したお金を払い戻そうとしたところ、税金を支払わないと引き出すことができないなどの理由をつけて、出金させないようにするんです。それで調べてみたところ、詐欺だとわかりました」
その後、同様の詐欺被害者がいないかとネットで探して知り合ったのが、この度、集団訴訟をするにいたるメンバーたちだ。彼らと情報交換をしているうちに知った「投資詐欺被害者の会」理事長、西条和秀氏に相談し、Facebook Japan合同会社を訴える流れになった。
Aさんは集団訴訟の代表のほか、個人的に次のような行動も起こしている。
「自分が詐欺被害に遭ったとわかってからは、あえて有名人の偽SNS広告を踏んで、その投資グループに参加しています。そしてやりとりのなかで口座を聞き出し、見つけしだい、銀行に連絡をして『この口座は、詐欺で使われているようです』と伝え、閉鎖させています。
相手は日本人名義だけでなく、外国人名義の口座のほか、高額の振り込みを指定する際には法人名義をかたるなど相手によって使い分けているんです」
そう怒りを滲ませるAさん。
#2では今回、集団提訴したその他の被害者にも話を聞く。
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取材・文/中山美里
集英社オンライン編集部ニュース班