社員の自信を取り戻すために課した「目標必達」

現在、オリオンビールの陣頭指揮をとる村野氏は、さまざまな企業を渡り歩いてきた“プロ経営者”として知られている。

ソニーの海外拠点では社長を務めたほか、出版社大手のデアゴスティーニ・ジャパンとカミソリメーカーのシック・ジャパンでも日本法人の社長として辣腕を振るってきた。そんななか、コロナ禍で厳しい状況におかれていたオリオンビールの業績回復に向けて村野氏に白羽の矢が立った。

オリオンビール社長・村野一氏
オリオンビール社長・村野一氏
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奇しくも、就任当初はコロナ禍の真っ只中。そこから、いかにしてオリオンビールの立て直しを図ったのか。

「最初の3か月はどこをテコ入れすべきか考えた」と話す村野氏は、“目標必達”がオリオンビール浮上の最重要事項だと見定めたという。

「簡単に言うと、目標を達成して自信を取り戻す。個々の営業マンが見積もった予算を積み上げ、会社全体の予算を決定するという方針に変えました。やはり、人は自信を持つと物事がスムーズに回るようになるんですよ。
営業マン一人ひとりが予算を決め、目標必達のために全力投球する。その総和で積み上げた予算を達成することで、会社に勢いをつけようと考えたのです」(村野氏、以下同)

今までも、沖縄や株主の期待に応えようと頑張っていたものの、成果には結びつかずに予算未達が続いていた。

そうした状況を打破すべく、「必ず目標必達」を営業マンにコミットさせ、社内に新たなカルチャーの風を吹かせたのだ。営業現場の改革を行なったことで、村野氏が社長就任した初年度から全社の予算を達成。「やればできる」という自信が社内に根付いてきたという。

「コロナ禍と重なったこともあり、当時は『一体、私たちはどうなるんでしょうか』という一抹の不安を抱える社員が多かった。それでも、数字を作ることで道を拓いていける、状況を変えられると考えていました。
『社員が自信を持ったら、オリオンビールはさらに上に行ける』。そう確信していたこともあり、優先順位を挙げて営業現場の改革から着手したのです」(村野氏)

もうひとつはマインド面の働きかけだ。ビール会社特有の習慣として、お酒の液量で評価する、というのがあった。