45年以上の歴史を誇る「黒ラベル」に起きた改革
黒ラベルといえば、「丸くなるな、星になれ。」のキャッチコピーや、「大人エレベーター」シリーズのCMでおなじみのビールだ。
現在の「黒ラベル」という名称が採用されたのは1989年。ビール党からは「黒ラベル」の愛称で親しまれており、それがブランドの正式名称に選ばれた。前身の「サッポロびん生」から数えると、45年以上の歴史を誇る。
野並氏は「当初から生のおいしさを追求し、独自の世界観を貫く姿勢が評価されている」と話す。
「発売当時から変わらない『生のうまさ』はもとより、常にお客様起点で考え、いかに共感してもらえるか。そのようなことを意識しながら、黒ラベルならではの生ビール体験や、完璧を目指すための工夫の積み上げが、お客様から長年ご支持いただいている理由だと考えています」
しかし、2000年代に入ると新ジャンル(第3のビール、麦芽を原料としないビールテイスト飲料)や缶チューハイやカクテルといったRTD(Ready to drink)がビール各社から次々と市場に投入され、生ビール時代を拓いた先駆者・黒ラベルの勢いに陰りが生じ始める。
多種多様な種類が並ぶアルコール飲料に埋もれてしまい、黒ラベル本来の魅力が訴求しにくくなったのだ。
このような状況下で、黒ラベルの持つブランドストーリーや生ビールの王道として生のうまさにこだわるという原点にもう一度立ち返り、黒ラベルらしさや独自性を見つめ直すようになる。
「ブランドの若返りを狙って訴求ターゲットを若年層に合わせたのではなく、黒ラベルが大切にしてきたものや価値、姿勢など、ブランドの原点を再度見直しました。お客様とどのようなコミュニケーションをしていけば、時代に求められる商品になるのか。そのように考えて、黒ラベルの世界観が伝わるよう、実直に趣向を凝らしてきた結果として、若年層にも受け入れられたのだと思っています」(野並氏)
2010年には「ブランドパーソナリティの強化」にも着手。黒ラベルの特徴である探究心やこだわりといったブランドの個性を具現化し、自分なりの価値観を持った“大人”が飲む憧れの存在としてアピールする方針を打ち出した。