絶食後しばらくして脂肪が燃えはじめる
このようにグリコーゲンは簡単に使えるが、その量にはかぎりがある。ファスティングの時間が短い場合なら、グリコーゲンは身体機能に必要なグルコースを補うのに十分な量がある。
だが、ファスティング時間が長くなると、肝臓は蓄えられている体脂肪から新しいグルコースを生成するようになる。このプロセスは「糖新生」と呼ばれる。文字どおり「新しく糖を作る」という意味だ。つまり、エネルギーを放出するために脂肪が燃やされるというわけだ。
これは脂肪が蓄えられるときと逆のプロセスだ。
こうした「エネルギーの蓄積/放出」のプロセスは毎日起こっている。通常は、このバランスのとれた、よくできたシステムはうまく統制がとれている。食事をすると、インスリンの量が増え、エネルギーをグリコーゲンか脂肪にして蓄える。
ファスティングをしている時間は、インスリンの量が減り、蓄えておいたグリコーゲンや脂肪が使われる。食べている時間(インスリンが多い時間)と食べない時間(インスリンが少ない時間)のバランスがとれているかぎり、体脂肪の量が増えることはない。
「食べている時間」が長いと体脂肪が増える
エネルギーの蓄積において、インスリンにはもうひとつ役割がある。
肝臓がグリコーゲンでいっぱいになってしまうと、新しく作られた脂肪を蓄えておく余裕がなくなる。「トリグリセライド分子」というかたちの新しい脂肪は、肝臓内で作られたリポタンパク質という特別なたんぱく質と結合して「超低密度リポタンパク質」となり血中に放出される。
すると、インスリンはリポタンパク質リパーゼというホルモンを活性化させ、脂肪細胞に「血液からトリグリセライドを取りこんで蓄えろ」という信号を出す。このようにして、余った炭水化物とたんぱく質は、体脂肪として長期間蓄えられる。
インスリンが過剰に分泌されると、脂肪の蓄積が加速して肥満になる。
どのようなプロセスかって? 食べている時間が食べていない時間より長くなるとインスリンが多い状態が続くことになり、それが脂肪の蓄積につながる。
「グルコースを取りこめ」というインスリンからの信号が肝臓に過剰に出されると、最終的には肝臓内でグルコースから新しい脂肪が作りだされる。一般的に、インスリン値が高い時間(食事をしているとき)とインスリン値が低い時間(ファスティングをしているとき)が交互にくれば、体重は変わらないはずだ。
しかし、インスリン値が高い時間が多くなってしまうと、「食物エネルギーを体脂肪に変えて蓄えろ」という信号をつねに受け取ってしまうことになる。
文/ジェイソン・ファン 写真/shutterstock