「もっと岡山弁を使え」とアドバイス
「5upよしもと」の舞台袖でノブが漏らした弱音とも迷いともつかないようなひと言――。それに対する本多氏のアドバイスがふるっていた。何と本多氏は「そんな心配はいらんいらん。もっとどんどん岡山弁を強調したほうがええよ」とノブを励ましたというのだ。そのときの心境を本多氏はこう説明する。
「じつは私も岡山に住んでいたことがあるので、千鳥の岡山弁のどぎつさはよく理解できていました。たとえば、岡山では『いけない、ダメ』ということを『そげなことをしちゃぁいけん』と言うのですが、意味を強めたいときには『そげなことをしちゃぁおえん』となる。つまり、岡山弁では『おえん』は『いけん』の最上級なんです。そして、大悟くんはそんな最上級表現のどぎつい岡山弁を漫才でがんがん使う(笑)。
ただでさえ、他の都道府県の人は岡山弁の意味がよくわからないのに、これではノブくんが不安になるのも無理はありません。でも、お笑いの世界では方言は笑いをとる強力なアイテムなんです。耳慣れない方言に、客は『どんな意味だろう?』と注目し、そこでひと笑いをとるチャンスが生まれる。
さらに相方がその方言の意味を客席に向かって説明するときにも笑いのチャンスができると考えると、方言は二重、三重の笑いの武器になるんです。だから、ノブくんには『おえんじゃお客さんにわからんけん、せめて、いけんくらいにしとけぇ!』と、大悟くんを諭すふりをして客席に向けて説明すればいいだけのこと。
そうやってノブくんがフォローすることでお客さんが岡山弁の意味を理解できるだけでなく、大悟くんのしゃべりが際立ってさらに笑いをとれる』と伝えました」
そのアドバイスを聞いたノブは、驚きながらもどこか安心した様子だったという。
「最初は『えっ、じゃあ、俺らはこのままのしゃべりでええんですか?』と驚いたような様子だったんですが、私がさらに『これだけどぎつい岡山弁をしゃべる漫才コンビはほかにおらへん。それだけ君らの岡山弁漫才は目立つということやんか』説明すると、なるほどと得心したのか、ホッとした表情になっていました」(前同)