自分の力でリフォームしてつくる、“町の写真館”
――実際に新生活をスタートしてみて、どうでしたか? 正直、5往復って聞いたときはびっくりしました。
「個人的には、もっと大変なイメージやったんやけど、意外とできるもんよ。でも、羽田空港の近くに寝泊まりする事務所があるっていうのが大きいかな。バスで京都駅に行って、新幹線で品川に行くほうが大変やと思う。だけど、やっぱりお金の面でいうと、自腹切らなあかんところは自腹切ってるから、受けられへん仕事は出てくるよね。それでも、多いときは5、6往復はしてるかな」
――5、6往復してるってことは、数日だけでも帰ってきてるってことですよね?
「改装を早く進めたいっていうのももちろんあるし、東京にいる間は暇なのよ。東京の部屋は、ほんまに寝泊まりするだけやから、最低限のものしか置いてへんし、コロナ真っ最中で友達にも会えへんし、ここで時間を無駄にしたくないって思うとやっぱり帰ろうってなるのよね」
――鹿児島でも写真の仕事はしてるんですか?
「来週は熊本で旅行系の撮影があるかな。東京の仕事やけど、九州に移住するから、九州の仕事は振ってほしいって話をしてあって。こっちで撮影することも増えてきてるね」
――移住してからの計画みたいなものって何かありましたか? タマさんはアクセサリーを作ってるんですよね?
「一応、東京でスタジオ兼アクセサリー工房兼ショップみたいなものもできるかなって考えてみたけど、もちろんお金の面もあるし、東京だとそんなに目新しくもないし。だったらもうちょっと知られていない、知らない人達がいる場所で、また一からスタートするのもいいんじゃないかって思ったのよ。写真の仕事は続けつつ、お客さんに直接働きかけられるものを考えたら、街の写真館みたいなものがやりたくなったのね」
――“街に新しく写真館ができる”って、その響きいいですね。
「それに、マンネリ化してたっていうのも大きいと思う。一年が過ぎて、また一年が過ぎて、このまま年を食っていったら、いつか後悔しそうだなとは思ってたから。子どものためだけに移住したってわけじゃなくて、夫婦2人が楽しんでないと、子どもにも良いイメージを与えられへんって思ってるから、家族全員のための移住やね。でも、言うても子どもは世田谷で育っちゃったから、どうなんかなあとは思ったけど、意外と馴染んでくれてるね」
――小学校も目の前にあるし、環境もすごくいいですね。
「めっちゃ近いから、子どもたちが学校帰りに家の様子を見に来てくれるのよ。今、俺は大工だと思われてるけどね」
――大工? え? リフォームって自分たちでやってるんですか?
「そうそう。柱を入れるとか屋根の補強とか、そういうのは棟梁にお任せして、自分では床を貼ったり、漆喰塗ったり、土間打ちをしたり……」
――そういうことか! この前、仕事で会ったときもリフォーム中って言ってたから、結構時間かかってるなと思ってたんですよ。以前からそういう知識があったんですか?
「全然、全然。DIYとかは多少やってたけど、今は棟梁に言われて、床に潜って傾いている床のレベルを合わせる作業もしてる。だいぶ鍛えられてるからなあ。有難いよね」
――経験値めちゃくちゃあがってますね。お店のコンセプトとかはあるんですか?
「スタジオは、『senpenbanca.』って名前。ローマ字にしてるけど、四字熟語の『千変万化』ね。出会いとか別れとか、入学式とか七五三とか、そういう変化を写真に残してほしいって気持ちと、あと、スペース自体がいろんな形に変わっていけばいいと思っていて。写真スタジオっていう決まった形でやっても面白くないから、時にはギャラリーでもいいし、時には期間限定のショップでもいいし、地域の人が集まる何らかのスポットになればいいなっていう思いもあるのよね」
――完成はいつを予定してるんですか?
「今、インスタで作っていく過程をアップしていて、桜が咲くころには完成させたいと思ってるんだけどね……どうかなあ。周りのじいちゃんばあちゃんからは、早く撮ってほしい、早く完成させないと死んじゃうよって言われてる(笑)」