発売予約開始と同時に在庫がなくなった最高級ウォークマン

最後に、イヤホンやヘッドホン以外のマニアックな商品も紹介してくれた。それが、ソニーが今年3月末に発売した最高級ウォークマン「NW-WM1」シリーズの最新機種である。

上位モデル「NW-WM1ZM2」は39万6000円、下位モデル「NW-WM1AM2」でも15万9500円もするという代物だ。それなのに爆売れしていて、e☆イヤホンでは7月まで入荷待ちだという。「発売予約開始と同時に予定在庫がなくなりましたから」と東谷さん。何がユーザーを惹きつけるのか。 

50万円の高級品からオーダーメイドまで マニアがハマる「イヤホン沼」_7
銅に金メッキを施したソニーの最高級ウォークマン「NW-WM1ZM2」。手に持つとずっしりとした重みを感じる

NW-WM1ZM2は無酸素銅を削り出したボディに金メッキを施している。重量も約490グラムとずっしり。たとえば、最新版の「iPhone 13」が173グラムなので、いかに重厚な作りになっているかおわかりいただけるだろう。デバイスの軽量化が進む中で、逆行しているようにも思えてしまうが、それでも使いたいと思うユーザーが望んでいるのは、高品質なサウンドだ。

銅の純度を約99.99%に高めたことで抵抗値を低減。それが伸びのある高音や、クリアで力強い低音を再現可能にしている。さらに、内部の基板と基板をつなぐ配線のグレードを上げて、KIMBER KABLE(キンバーケーブル)という高級ブランドのケーブルを仕込んでいる。

幅広いユーザーを獲得するための努力も惜しまない。従来は内部のOSにソニーのオリジナルOSを使用していたが、最新機種はAndroidになった。これによって、YouTubeやSpotifyといったアプリ経由で音楽を聴くことができる。当然、ただ聴けるだけでなく、その音質も高められる。日本のオーディオメーカーにかつてのような勢いがなくなっている中で、ソニーが開発した意欲的な商品に対し、e☆イヤホンの広報室マネージャーの三友卓哉さんも興奮気味に語る。

「たとえば、YouTubeには粗悪な音源も多々ありますが、それすらも心地よく聴けるレベルにすることができます。ソニーの歴代のエンジニアの叡智が詰まった、今時のサブスク全盛期にバッチリ合わせてきたウォークマンです」

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WEB本店で店長を務める東谷圭人さん(左)と、広報室マネージャーの三友卓哉さん

オーディオマニアは底なし沼にハマるというが、スピーカーやアンプに限らず、イヤホンでも同じような現象が起きていることがよくわかった。冒頭に述べた通り、e☆イヤホンでは自由に試聴できるため、「朝から晩まで一日中、店にいる人もいます」と東谷さんは微笑む。自分にとって最高の音を求めて、今日も秋葉原にはこだわりのマニアたちが吸い寄せられてくるのだ。
(撮影/伏見学)