イラスト投稿から誌面デビュー!

「ロードショー」がオンラインで復活すると聞き、うれしいと同時に慌てふためき、思い切ってスマホを購入しました。「公衆電話とテレホンカードがあれば事足りる」と生きてきた人間が、今やスマホ教室に通って、いちから学んでおります。それくらい、私にとって「ロードショー」は特別な存在。

なかでも2001年6月号は、さらに特別。第73回アカデミー賞授賞式を、編集部の方が現地取材された号です。
当時いち読者だった私は、そのページを夢中になって何度も読み、眺め、この興奮と喜びを自分なりに形にしたいと考え、イラストブックをこしらえてロードショー編集部に送りました。今考えると、大胆、こわいもの知らず…でも自分の行動力に乾杯。

あの鈴木清順監督にファンレターを書いたら、自宅に招待された話_a
ともゑさんの人生を変えた号。LA現地取材で16ページにわたるアカデミー賞特集が。
©ロードショー2001年6月号/集英社

「絵を描くこと」と「仕事」がつながった、初めての場所「ロードショー」。何もかもが初めてづくしでした。

カラーページのことを出版用語で「4色※」と呼ぶのを知らず、「それしか使っちゃいけないんだ…」と4つの色だけを使ってイラストを仕上げたなどという、素人ならではのズッコケ話など多数。
※オフセット印刷では通常4つの色のかけあわせと濃淡でカラーを表現する

…と、こんな感じではありますが、「ロードショー」では約8年間、イラストを描かせていただいておりました。イラストレーターなので、スターにじかに会ったり、インタビューなどをしたことはありませんが、ただひとり、映画に深くかかわった人に、直接お会いする機会がありました。

映画監督の鈴木清順さんです。

ただファンのひとりとして絵と手紙を描いて送ったら、「家に遊びにきてください。ご馳走します」とお返事が。どれほど感激したことか。

たしか5月だったと思います。喜びと緊張で汗ばみながらご自宅にうかがいました。
「どんな雑誌で描いてんの?」と訊かれ、
「は…はい、あの、“ロードショー”で…」
「ああ! そう、へえ…」
わあ…テレビで見るのと一緒だ…おだやかで、ひょうひょうとしてて。

映画の話はほとんど…というか、いっさいしなかったと思います。「おまえは何しに行ったんかい」という大きなツッコミが日本、いや、世界の鈴木清順ファン(特にクエンティン・タランティーノあたり)から入りそうですが、仕方ありません。事実です。